PHOENIX MYTHOLOGY〜転生神話〜
□壱――碧い瞳 2
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後日、採用試験の日と相成った。
少女の他にも数人の候補者が登城していたが、その全ての人間が例外なく少女を目に留め、不信の念を抱いていた。
幾つかの視線を自らの体に集めている当の少女はしかし、それを気にもとめず自らの勉強を黙々とこなしていた。
そんな姿を大分上の階から見ていたキーシュは隣の宰相に話しかけられた。
「何故王はあの少女が試験を受けることを許されたのです?
あのまま追い返すことも出来ましたでしょうに」
「……レイディン、お前にはあの少女の瞳が見えなかったのか?」
キーシュはそう言うと少々強張った表情をレイディンに向け、話を続けた。
「全てを見透かすような目だ。
こちらが寸分でも隙を見せれば飲み込まれてしまいそうで……。
″目は口ほどに物を言う″の良い例だよ。
彼女は目だけで私に訴えたのだ。
その要求を。
気づいたらyesと答えていたよ、恥ずかしながら。
……それに、あの子には何かを感じたんだよ、レイディン」
「何か、でございますか?」
「あぁ。
とてつもなく強く引かれるものを」
再び少女の方に視線を向けたキーシュにレイディンは何とも言い難い靄を内包しつつ、不安気な視線を主へと投じた。
それに気づいたキーシュは苦笑した。
「大丈夫だよ。
我が国の王城起用試験の難しさはレイディン、お前自身がよく知っていることだろう? 」
キーシュはレイディンの方を向いて安心させるように微笑みかけた。
レイディンの方も口元に微笑を浮かべてキーシュの方に向かって胸に手をあて頭<こうべ>を垂れた。
「受かるはずがなかろう。
……私のこの予感が当たらない限りは」
キーシュは呟き、王城の豪奢な天井を見上げた。
――この後誰もが予想しなかった事が起こることを、この時のキーシュが知るはずも無かった。
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