PHOENIX MYTHOLOGY〜転生神話〜
□追章
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そこは暗かった。
その部屋には窓は一つもなく、外から光が差し込むことなど出来ようもなかった。
にもかかわらず光源となるような電飾の類は一切無く、お互いの顔はおろか、自らの体を見ることも不可能でありそうな部屋である。
しかしどういう訳か、その部屋にいる六人ははっきりと形が捉えられ、何不自由なく内の一人の話に耳を傾けていた。
数少ない家具の一つである巨大な円卓からは、香茶の優しい香りが湯気と共に立ち上り、その部屋のどこか重苦しく邪悪な雰囲気には場違いな印象を与えていた。
話をしていた一人がそれを終えると、ティーカップを口に運んでいた一人がソーサーに戻し口を開いた。
「黄薔薇、ご苦労でした。
それで、貴方の正体は気付かれていないわね?」
(はい。
その事に関しましては心配ございませんのでご安心ください)
黄薔薇と呼ばれた話をしていた人物――セスナを殺した――は淡々と声ならぬ声で返答した。
「よろしい。
――それにしても薔薇の君、この度は大変な失態をやらかしてくれたわね。
有能な部下のお陰で命拾いをしたようなものですわ」
クスりと嫌みったらしくねっとり笑う女に話かけられた女は拳を握り締めた。
「くっ……蘭の君。
この度の失態は自分でも自覚しております。
この挽回は必ずや。
しかしそれよりも気になる情報が入っております。
……この黄薔薇に一筋でも傷を負わせたユリガルの近衛、
金髪に碧眼だったとか」
「「なっ」」
これには批判を飛ばしていた“蘭の君”と呼ばれた女以外に、無言を通していた他の三人も反応を示した。
「牡丹の君!!」
“蘭の君”と呼ばれた女は、別の一人へと尋常でない焦りと共に呼びかけた。
これに“牡丹の君”と呼ばれた女は頷いた。
「これはもしかするとあの神々かもしれない。
黄薔薇、引き続き調査を行いなさい。
他の君も用心するように」
「「はい、牡丹の君」」
(は、牡丹様)
それを境に中にいた人物は全て消えていた。
扉も窓もない部屋からどのように出たのかは、謎である。
To Be Continued?
→まとめあとがき
出来れば目を通して下さい。
今後のことについて触れております。