PHOENIX MYTHOLOGY〜転生神話〜
□伍――帰結=始原 2
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「――ば、馬鹿な……」
セスナは力が抜けたのか、遂に両膝を床に落とし絶句していた。
表情に浮かぶのは驚愕。
限界まで見開いた濁った瞳はリースと、その向こうに立っているキーシュを半透明な白い膜へと映している。
セスナのその様な状態に労る様子もなく、キーシュはそのまま言葉を投下した。
「何もおかしなことは無いだろう、コーネル王。
我々の国に、滅んだ王国の子女が亡命してきたところで、特異なことなど無いはずだ」
実際初めはそうとは気付かなかったのだがな、とは小声での発言だ。
キーシュの発言も頭に残っていないようなセスナに、リースは冷たく言い放った。
「――一つあなたに。
我が父母は、ユリスルがコーネルに攻め入られることなど、気付いておられましたよ。
しかし、それでもユリスルが軍統制を敷かなかったのはその力が強大すぎることを理解していたからです。
……母はこう言いましたよ。
――『あなたの顕現した強大な力は本当に信用の置ける王にだけ告げ、使うこと。
――だがしかし、コーネル国の為にだけは使わないで欲しい』
とね」
この言葉を聞いたセスナは遂に両手も地についた。
握った拳はどういう感情か震えており、視線も下がっている。
そんなコーネルの王の姿を認めたキーシュは決して会わない視線をセスナに向けながら口を開いた。
「そういうことであるからコーネル王、我々は本国に帰らせていただく。
この件については最初からお互い何も無かったことにしよう。
そうすればこの度の貴国の非礼も、とりあえずは無かったことにする。
勿論依存はありませんね?」
キーシュの放った言葉にすらセスナは反応しなかった。
しばらくキーシュは返答を待ったが諦め、ため息を落とすときびすを返した。
「守られなかった場合はこちらにも考えがある。
そこをよく考えてもらいたいものだ。
――失礼する」
キーシュがきびすを返したことにより、イザードも形式的に軽く会釈をすると――リースは未だ動く様子は無いが――父に続こうとした。
しかし、その行動はセスナが小さく発した声により止められた。
「…………ろ」
「……何?」
ピクリと振り返ったキーシュとイザードの目に、赤黒くなった顔と血走った眼をしたセスナが映った。
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