PHOENIX MYTHOLOGY〜転生神話〜

□伍――帰着=始原 1
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翌日、再びユリガル・コーネル両国のトップ会談がもたれた。
今度は両国共護衛や臣達も同伴する中で、である。
勿論リースもキーシュとイザードの座る椅子の斜め後方で周囲を警戒しつつ立ち会っている。

一方のコーネル側はセスナのみがキーシュ達の向かい側の椅子に座している。
その後方には、よく見かけるセスナの秘書である女と近衛であろう屈強な男がリースと対称する位置で存在を主張させていた。
他にも世話役のメイドや執事などが控えていたが、ユウハの姿は何処にも見あたらなかった。

最初の挨拶から暫くの間、両者の間には沈黙が下りていた。
元より話に乗り気でなかったキーシュの方は瞳を閉じ、そのまま無言で、彼にしては珍しく顰め面でいるのに対し、カラメリアの効果を信じて止まないセスナは満面の笑みで口火を切った。


「さぁ、キーシュ殿。
先日からのお話、お返事をいただけるかな。
決して悪い話ではないだろう?」


セスナは勝ち戦をする将のように、余裕綽々といった体<てい>で口を開いた。


「……」


対しキーシュは瞳を閉じ腕を組んだままの体勢で無言のまま次の言葉をまった。


「我らコーネル国の傘下として、ユリガルはこれからの政<まつりごと>を進めていってもらえますかな?」


セスナは疑問文だが、確認の意味をこめて口に出した。

――全てが上手くいった――

セスナがそう思い、勝ち誇った笑みを浮かべていると、キーシュが今まで伏せていた瞼を上げ紫の瞳を露わにして感情の無い瞳と抑揚のない声で一刀両断した。


「その件については再三再四伝えたように、

お断りさせていただく」


キーシュはそこで漸く形式的では有るが表情を緩めた。
笑む事で表面的には穏便に済まそうという意志を示したのだ。
無論、セスナの表情は凍りついた。
そのまま間髪いれずにカラメリア入りの茶を運んだ秘書の方を振り返り確認を行うが、秘書は是――茶を確実に届けた事を、こちらもまた色を失った顔で伝えた。
どういうことか全く理解できないセスナは、その場の空気と共に戸惑いを露わにしていた。


「カラメリアについてならば、私共は誰一人口にはしておりませんよ」


にこりと綺麗に笑いながらリースから放たれた言葉の意味を理解したセスナは、文字通り再び凍りついた。

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