PHOENIX MYTHOLOGY〜転生神話〜
□参――コーネル 5
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「どうだ?
アーリルス」
キーシュは、静浄泉から与えられた部屋へ帰ると直ぐに何やら部屋を物色し始めたリースに向かって尋ねた。
尋ねられた方のリースは鉢植えの中から丁度何かを見つけたらしく、見つけたその小さな物体を持っていた鉄製と思われる箱に入れると中身をキーシュとイザードに見せ、その上から磁石のような物と厚手の布を何重にも重ねて入れ、蓋を閉めた。
「もう大丈夫でございます、キーシュ様。
これで全てです。
念のために磁石を持ってきていて正解でした」
「録音装置とは、何とも醜く汚いやり方ですね」
イザードはしっかりと防音と撹乱を施されて部屋の隅に置かれた箱を見ると、呆れと嫌悪感から思い溜め息を吐いた。
リースもそれに同調するかのように息を吐いた。
「うむ、リース。
ご苦労であった。
……それでは本題に入ろうか」
イザードとリースは一様に頷いた。
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「……という訳で、この城にはいたる所に罠が仕掛けられております。
しかも私は静浄泉でマタラコブリに襲われました」
淡々と報告するリースに対し、聞いていた方のキーシュとイザードは絶句した。
確かに何らかの危害を加えられる事は想定済みであったが、そこまでやるものなのかと僅かに血の気が引いた。
「恐らく近衛――軍人である私を落としてしまえば、キーシュ様も大人しく了承するとでも考えたのでしょう。
……不可思議なことに、仕掛けたコーネル国側であるはずのユウハ王子は私を助けようとなさいましたが」
「ユウハ王子がか?」
キーシュの問いに頷くと、リースはユウハとの会話を思い起こしていた。
その身のこなし、頭の回転、態度……。
「ユウハ王子に気を張っておく必要も有るでしょう。
私を助けた意図や一連のコーネルの策略について承知しているのかどうかはわかりませんが、……かなり頭がキレるとみて間違いないでしょう」
リースの言葉にキーシュは口元に指を当て、考えを巡らせた。
その部屋は三者三様の思考の為に沈黙が降りており、外の雷鳴が空気を読まないかのごとく音を発する音がやけに耳についた。
三人の顔は全て一様に堅く、無音の部屋には重力が何倍かかかっているのではと思うような閉塞感が感じられた。
そんな時間が数分、或いはは数十分続いた後、イザードはポツリと口をついた。
「……やはり何かがおかしいな。
この国は」
イザードの呟きに、止まっていた彼の部屋の時が動いたかのようであった。
リースとキーシュは無言でイザードの顔を見つめ、無言で先を促した。
促されたイザードは、考えを纏めようと長く形よい指を口唇に当て、思案しながら先を紡いだ。
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