PHOENIX MYTHOLOGY〜転生神話〜

□参――コーネル 3
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――ゼブリス城内


(しかし、いったいこの城は幾つ罠を張れば気が済むのか……)


応接室から静浄泉へ向かう途中で既に数十個の罠を見つけたリースは、流石に痛む頭にこめかみを揉んだ。
普段ならば他国の賓客を迎えるのにどういう了見かと軍事関係者にそのことについて指摘をするリースだが、今回ばかりはピンポイントに自分達の為にわざわざ用意された物である。
そこを指摘する事で少しでも不利な状況になるのを避けるために渋々ため息をつくだけに留めた。
周囲には全く人の気配は無く、怪しくなった空模様の合間に鳴る雷の唸る音以外は何の音もしない無音の世界が広がっている。
リースは周囲に目を配りながら、更に足を進めた。


しばらくすると、豪華、と言うよりは成金趣味と言った方が良いようなゴテゴテとした装飾で彩られている温室のような場所の入り口にたどり着いた。
リースはその扉の取っ手を引くと、全神経を集中させ温室の中へと足を踏み入れた。
温室の中は軽く城が一つ分は入るほど広く、芝生が生い茂り花々は咲き乱れ、それに惹かれるように装飾を施したがごとき優美な羽虫は飛び交い、何とも言い難い素晴らしい空間が広がっていた。


その大きな温室の中央部には、華美な温室のなかでも更に一際目立つモニュメントのようなものが堂々とその地に腰を据えていた。
噴水から流れ出る水がモニュメント達に流れ注ぎ、その水滴と暖かな日差し――外が曇っていた事から恐らくは人工物――によってキラキラと光り輝いてその存在を主張していた。


(静浄泉―。
この国の国教であるラドゥール教と他派の宗教神たちを祀るために作られた神殿……か。
恐らくはここに何かしらの秘密が隠されているはずだ)


リースは宮座の管理する神聖なモニュメントに近づくために歩みを再開させた。

泉へと近づき、ふと下に目をやると、何やらネームプレートのような風体の板が落ちていた。
どうやら神々を祀る為に作られたプレートの一つのようだが、それにしては他の泉に飾られた物と比べるとまだ真新しく、異様にサイズが小さい。
リースはそれを裏返し、書かれている神の名を見た。


「バイテクス……ローエンハイド…」


聞いたことの無い御名に、リースは何かを確信したようにそれを懐へとしまった。


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