PHOENIX MYTHOLOGY〜転生神話〜
□四――思慕 3
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キーシュも浮かない表情で肯定した。
二人が思案に暮れようとしていた丁度その時、少し古めかしい扉がギィと苦しげな音を発しながら外から開かれた。
「その心配は御座いません、陛下、殿下」
「「リース」」
リースは一礼して部屋の中へと足を踏み入れると外をさり気なく警戒しながら扉を閉め、二人の座す椅子へと近づいた。
「心配する必要はない……とはどういうことだ?リース」
キーシュはリースが側に来たのを確認すると不思議そうに発言主を見上げた。
「……ユウハ王子が全てを語ってくださいました」
「……ユウハ王子が……?」
一体何が起こっているのかと、驚いた二人はそれを隠そうともせずにお互いに顔を見合わせた。
イザードもキーシュもリースの言葉が意味するものがどれだけ重大で危険な物かを理解しているだけに、先を視線で急かした。
「ええ。
もうこれ以上父王に罪を重ねさせ、国共々滅んでしまうのは見ていられない、と。
……本当に大層聡明なお方ですよ。
ユウハ様は」
それからリースは、ユウハから聞いた誘導草の話など、密会の出来事を全て詳細に語った。
密会時の話をする際にイザードの眉間に些細なしわが現れた事は誰も気付くことは無かったし、方々の為にもあまり強く振れないでおこう。
何はともあれ、リースは得た情報の詳細を語った。
――ある一点のみを除いて。
三人がそれぞれの思考に入りこんでいると、扉を叩く音と老齢の侍女らしき女声が耳に飛び込んできた。
「ユリガル国王キーシュ様、並びに皇太子殿下、近衛隊長殿。
我が主が晩餐の席をご用意申し上げましたのでいらせられますよう、言付かって参りました」
侍女の恭しい声に三人は視線を絡ませ、キーシュの返事を皮きりに部屋の外へと足を踏み出した。
侍女はその姿を確認すると、一礼してセスナの元へと歩みを始めた。
勿論その際もリースは周囲の警戒を怠らなかった。
これから向かうのは、ある意味戦場である。
裏に逆巻く陰謀。
三者とも気を引き締めずにはいられなかった。
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食堂に入ると直ぐに、食卓に並んだ色とりどりの料理に鼻孔をくすぐられた。
その料理の置かれた食卓にはセスナを始めユウハ、そして妹姫達が煌びやかな衣装を纏い座っていた。
姫達はイザードへと熱い眼差しを隠すことなく向けている。
それを見たリースは密かに胸の内がざわつくのを感じたが、胸の辺りの布を掴むと、気づかない振りをしてしまい込んだ。
イザードはイザードでそんなことには良い意味でも悪い意味でも慣れきっている為、軽く無視を決め込んだようだ。
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