プレゼント
□秘密だ!
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どこか子供染みた笑いを浮かべた癸生川は、多少ひきつった僕の頬を無遠慮にぱちんと両の手のひらで挟めた。
「いいかい、伊綱くんには絶対に言うんじゃないぞ」
「いいけど、なんで?」
「なんでも、だ」
僕はこれから何時もの様にどこかへ出掛けてしまうのだよ、
君は何も知らなかった、いいね。ここに来た理由も、手の中にある手紙のことも、これからの約束のことも。
「…わかった。でも」
僕が最後に、どうしても気になった事柄のみを端的に問うてみると、
『秘密だ!』
彼は爽やかに、そうとだけ応えたのだった。
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