プレゼント
□バレンタイン小説A
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バレンタイン小説A
明くる年の2月14日
《サイコ》
遂に今年もこの日が来てしまった。
去年は失敗
一昨年も失敗
その前も………云々。
「………はぁ、」
衛は研究室の隅々にまで響き渡る溜息を吐いた。
彼の着いている席の周りには、これまた何時ものように女子学生からのチョコレートが少々乱雑に置いてある。
今からお返しを考えるのが、至極億劫だ…。
「―――まあ、衛様」
声のした方向を見ると、華奈が大きな紙袋を抱えて立っていた。少し苦労しながら扉を開けている。
衛は直ぐに華奈の所へ向かい、彼女から紙袋を受け取った。
「あの、お昼ご飯を食べていましたら…いきなり皆さんが」
紙袋の中には、衛と同様に様々な大きさのチョコレートが入っていた。
「トモチョコ、と皆さんおっしゃっていて」
どうやら“友チョコ”の波が彼女にもきたらしい。
「女性の友達同士で送りあうチョコレートですね」
「まあ、そんなチョコレートがあるのですか?」
どうしましょうチョコレートは四谷さんの分しか用意して無くて、と華奈は困った様に眉を寄せた。
「そうですね…ああ、そうだ」
衛は何かを思い付き、華奈をなだめてからデスクに戻り、受話器を取った。
「チョコレート、今から作りましょう」
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