プレゼント
□秘密だ!
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「………」
ぴきぴきと朱の額に血管の走る音。
ざわめく草木、どよめく周囲の人々。
「わっはっは!」
そして、中心にいるのはもちろん癸生川だ。
大きな大きな麦わら帽子を目深に被り、服はアロハシャツ、腰の蛍光黄色の浮き輪が眩しく、今日の晴天による太陽へとよく反射している。
「眩しいわ」
「そうだろう!」
一方の朱はこれもまた派手な赤色のワンピース。ビニールの手さげバックを肩に掛けている。
まさに2人とも、これから仲良く海に行く格好だ。
「冗談じゃないわ!!あたしは生王くんと仲良く海に行く予定で来たのよ!!」
「ああそうだな!手紙に書いてあった!」
「手紙に…って、読んだのあんた!?」
「生王くんがどうしよう癸生川〜と言いながら持ってきた」
「………」
「彼のチキンっぷりをなめたらいけないな君は!」
折角忙しい中わざわざ手渡ししたのに…と朱は脱力した。まさかこういう展開になるのか。
「………あーあ」
「落ち込んでいるのか!?」
「呆れてるのよ」
朱はにやにやしている癸生川を一瞥すると、くるりと背を向けて歩き出した。
「どこへいく!」
「…帰るのよ!」
人々の間をすり抜けながら歩く朱に対して、癸生川は浮き輪の分豪快に周りを巻き込んでついて来る。
その度に彼はくるくると回る。
まさに世間の荒波に揉まれている様だ。
「…楽しそうねえ、あんた」
「ははは!実はそうでもない!」
人混みが開けた。
海が見える、馴染みの公園だ。
「生王くんどうしてるかなー…」
「海だ!海だぞ!」
「今日は少し離れた海水浴場に行くつもりだったのに…」
「生王くんは今頃伊綱くんと事務所だろう!」
「!なら今からでも呼びに…」
「おお!バスが来たぞ!」
噛み合ってない。
猛烈に噛み合ってない!
朱は流されるままに、バスに乗り込んでいた。
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