プレゼント

□桜の樹の下で
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「???ど、どういうこと???」

「どういうことでしょう?」

あたしをからかうように笑う。

「遥が言ったことですよ?母のの指輪を返して欲しければ、別の指輪をくれって。間違ったこと、しましたか?」

「ま、間違ってないけど…でも…これって?」

「…嫌、ですか?まあ、赤い石ではないですが、遥の誕生石なので…。」

確かに指輪にはアクアマリンがついている。

「そ、そうじゃなくてっ!…ど、どういう意味なのよ…?霧香おばさんの指輪を取り戻したいだけなら…こんなに凝らなくていいわけじゃない…」

「凝らなくていいんですか?遥の誕生日プレゼントですよ。ホワイトデーのお返しも一緒で、ちょっと遅くなりましたが…どうぞ。」

「ふぇ?…あ、誕生日とお返しね。なるほど…そう…。」

ああ、誕生日プレゼントね…一瞬色んなことを考えちゃって…焦ったあたしが馬鹿みたいじゃない。
それでも衛からの指輪は…凄く嬉しい。本当なら飛び上がって喜びたいけど…ぐっと唇を噛んで押さえる。でもきっと、今の私の顔は誰が見ても嬉しさが溢れていると思う。
こんな顔を見られるのは…ちょっと嫌だなあと思って見てみると、衛は少し先を歩いていた。
よかった。衛は気付いてない。見ていない。
―――なので、思いっきり水色の透明の石を見つめ、にへらっと笑いながら衛の後をついて行く。


「しかしさあ…。アクアマリンだなんて随分奮発したじゃない。どうしたのよ。」

「そうですか?…給料3ヶ月分じゃないですが、遥はいいんですか?」

―――前を行く衛が、ぼそっと呟いた。


それって…???どういう意味?!

「えっ?…衛?い、今、何て言った?」

立ち止まって、衛を見つめる。冗談で切り返したかったけど…声は震え、上ずる。

「…いえ、何も言ってませんよ?何か聞こえましたか?」

少し先を行っていた衛が振り返り、しっかりあたしの瞳を見て何もなかったように微笑んだ。

「え…ぁ…ううん…。…聞こえない。衛がそう言うなら、聞こえない。」

あたしはずいっと衛に近寄り、近くから見上げてニッと頬を上げる。

「ねぇ…桜、綺麗ね。」

―――あたしの瞳から逃げるように桜に視線をそらす衛。

「綺麗ですね。…行きましょうか?」


暫く互いに無言で桜並木の下を並んで歩く。


「ま、衛…」

「はい、何でしょう。」

あたしを愛しむ、衛の視線。
そんな瞳で見つめられ…言おうと思った言葉を飲み込んだ。
―――いつか、きちんとあたしの瞳を見て言ってくれるよね?だからその日まで…さっきの台詞は聞こえなかったフリ、しててあげる。待っててあげるんだから…絶対言いなさいよねっ!

「…ねえ、飴細工屋さんがある!何か作ってもらわない?」

桜並木の下を衛と手を繋いで行く。
きっと来年も、衛の横で一緒に歩きながら移りゆく季節を愛でる。
そう…ずっと、ずっと。
いつまでも、ずっと。






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