プレゼント
□2000キリリク/kayanonn様より
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「冬の惑星。」kayanonn様より2000キリリク 遥と衛と羽生 いただきました。ありがとうございます!
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“I break my heart”
着信を知らせる電子音が、彼女と過ごす時間の邪魔をする。
一度切れても二度三度と鳴るので、彼女は申し訳なさそうに私を見た。
「ごめん。出てもいい?」
「どうぞ」
私が頷くと、彼女はけだるそうに立ち上がり、携帯電話を手に取った。
液晶画面に映し出された番号を見て顔をしかめ、通話ボタンを押す。
「……もしもし?」
『俺だ。……町で殺しだ。直ぐ来い』
プツッ
「あ、ちょっ」
一方的に通話を切られたのだろう。
彼女は小さくため息をついた。
「……仕事で呼び出されちゃった。行くね」
と困ったように笑う。
私はそっぽを向いて、
「そうですか」
とだけ言った。
そんな私に彼女は、
「そんな顔しないの。ちょっとおあずけくらったからって」
と、子供をなだめるような口調で言った。
「私は、そんな聞き分けのない子供ではありませんよ」
そのときの私は、見るからに拗ねていたのかもしれない。
彼女は側にしゃがみ込み、私の左頬を優しく撫でると、そこに軽くキスをした。
「また来るわ」
そして彼女は簡単に身仕度をすると、部屋を出て行った。
ひとり残された私は、微かに残る彼女のぬくもりを抱き締め、ゆっくりと目を閉じた。
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