遙かなる時空の中で

□はちみつのいろ
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【はちみつのいろ】






「…ん……」


閉じた瞼に、柔らかな光を感じて瞳を開ける。
廂に差し込む陽の暖かさに眠気を誘われて、いつの間にか眠ってしまったようだ。

「あ、起きた?彰紋くん」
「…花梨さん」

ぱさり、と掛けられていた衣が落ちた。
それを手に取り、そばに立つ花梨を見上げる。

「すみません、眠ってしまったようで…。」
「ううん、気にしないで。彰紋くん忙しいから疲れてたんだよ」

彰紋の隣に腰掛け、花梨はにっこりと微笑んだ。

「これもあなたが掛けて下さったのですか?」
「風邪引いちゃったら大変かなって思ったの。もうお昼でも寒いし」


空はすでに黄昏に染まっていて、もうしばらくすれば世界は夕焼けに染まるだろう。そんな時刻だ。


「すみません、花梨さんにこのような…」
「違うよ、彰紋くん」


むぅ、と軽く頬を膨らませる花梨。

「え?…あ」
「ふふ、まだ眠たいんじゃない?」
「そんなことはありませんよ。少し寝ぼけているかもしれませんが」


同じだよ、と花梨が笑う。
それを見て、彰紋の頬も自然と弛んだ。


きちんと花梨に体を向け、微笑む。
黄昏時の陽に少女の髪が照らされて、少し眩しい。


「ありがとうございます、花梨さん」
「どういたしまして、彰紋くん」


お互いに瞳を合わせて、名前も呼んで。
それが少し可笑しくて、二人でまた笑い合った。

そして、花梨が笑ったまま口を開いた。

「ねぇ、彰紋くん。彰紋くんの髪って、綺麗な色してるよね」

いつも思ってたけど、と。


「蜂蜜の色みたい」
「…蜂蜜、ですか?」
「うん、蜂蜜。色もだけど、優しい味がするところとかも彰紋くんみたい」

そう言って、無邪気に微笑んだ。

「それをいうなら、花梨さんもですよ」
「え?私?」
「はい。温かな日差しに照らされて、とても綺麗です」

彰紋は、花梨の髪に手を伸ばし、優しく触れた。
さらさらと、小さな光の粒子を零しながら流れる髪。

少し頬を染めた花梨が、嬉しそうに瞳を細めた。


「…同じ、だね」
「はい、同じです」



また二人で瞳を交わして、微笑んで。



こつん、と互いの額を合わせて、笑いあった。




「001:はちみつのいろ」
お題提供:総和零遊戯


次項、感想です。






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