オリジナル(その他)

□今月は28日で終わります
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時間の神の館の隣にある日付の神の館。
年を司る神はその年1年間。
月を司る神はその月1ヶ月。
日を司る神はその日1日。
年替わり・月替わり・日替わりで執務室にこもり働いている。


今日2月28日は2月を司る神と28日を司る神の女性コンビ。
仕事はその日起こる行事や記念日のチェック・誕生日のチェックなどがあり、頭の上まで積みあがった書類が7山、8山・・・。
グラグラファサファサガタガタガタガタ

「もうっ。また崩れちゃった。」

「2月を司る神がもう少し丁寧に置いてくれたらいいのにー。」

「私は今月もう28日間ここに缶詰なの。ちょっとは気を使ってくれればいいのに。」

「えーでもー。」

わいわい言いながらも書類の山がどんどん減っていく。

「あ〜あ。なんで今日が月末なんだろう。」

「?」

「私がこの部屋の月末処理しなきゃなんないからさー。2月を司る神はそう思わない?」

「私は2月は閏年であってもなくても月末処理してるからね。大体、30日を司る神と31日を司る神は2ヶ月に1回やってんだから、1年に1回くらい変わってあげたっていいでしょ。」

「その代わり、あの仲良しコンビ、今月は二人して旅行に行っちゃってるよー。30日・31日がない今月は時間があるからって。」

「月末処理は大変なんだから、今月くらい遊ばせてあげなきゃ。」


「あ、開けてくださーい」

ドアをどんどん叩く音にまぎれて声が執務室の扉の向こうからかすかに聞こえてきた。

「うん?」

扉をあけると少年がぽつんと立っていた。

「29日を司る神だー。」

「そうです。ボクです。執務机、借りますね。」

「どうしたの?急に来たりして。」

「今年はオリンピックイヤーだから、2月29日の準備をしに来ました!」

「「・・・。」」

「月末処理のために前日入りしてます!」

「あのさー。」

「はい。なんでしょう?」

「オリンピックイヤーだから閏年って・・・」

「はい。一昨年2月を司る神である貴女に言われました。ボクが毎回忘れるから、『オリンピックイヤーが閏年だって覚えなさい』って。」

「び、微妙に間違ってる、ねー。」

「確かに。ねぇ、29日を司る神。私オリンピックイヤーの前に『夏の』ってつけなかったかな?」

「え、・・・。」

「ついでに、2月29日がある年は閏年を司る神も君を迎えに行ってくれるから、とも言われてたよねー。」

「え、えっと・・・。」

「まぁいいわ。月末処理が全然進んでないの。まだ日常業務であっちの山とこっちの山があるし」

「月末処理の山はあそこから向こうにあるから」

「「せっかくだしやっていきなさい」」

「あ、は、はい・・・。」


日常業務を28日を司る神と2月を司る神が。
月末処理を29日を司る神が。
時間がないと大騒ぎしながらようやく終わったのが3月1日の朝。
3月を司る神と1日を司る神に執務机を取り上げられてからの床での作業に

「筋肉痛になりそう。」

「もうくたくた。」

「動けないよー」

『何で今月は28日に終わっちゃうんだ。2月中に終わらせなきゃいけないことが終わらなかったじゃないか。』

心の底で3人とも呟いていた。

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