オリジナル(ホラー)
□夏祭りの夜
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「夏祭りって、何かとっても楽しいよね。」
麻衣は彼氏の勝人とマンション群の間を通りながら帰るところだった。
「今年は綿飴売り切れる前に買えたし。」
「俺はやっぱり一気飲みで優勝したかったな。」
「惜しかったもんね、ホント。タッチの差だったよね。」
「優勝景品の『例のネズミ』のいるランドの招待券、欲しかったなぁ。」
麻衣は水草の間を優雅に泳いでいる真っ赤な金魚がちりばめられた自分の浴衣と水色の帯をちらりと見た。そこには今年の夏休み、二人で『例のネズミ』に会いに行ったときに、浴衣で来た人限定で配っていた飾りが、街頭の光に当たって輝いていた。
「また行きたいね♪」
勝人の顔を見上げながら麻衣は言った。