オリジナル(ホラー)

□506号研究室
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あの日、私が帰ろうとしていると、先輩と共に調子の悪くなった印刷機を予備機と取り替えてくるように、と教授から頼まれました。

先輩は一瞬困ったような顔をしましたが、すぐにあきらめたような顔になって「行こっか」と誘ってくれました。



私は大学で4階の研究室を使っています。

研究棟は8階建てで、真ん中にエレベーターが通っています。各階のエレベーターの隣は倉庫や資料室になっていて、実験器具やら試料やら文献やらが置かれています。

5階を除いて。

5階はエレベーター横だけでなく、端から2番目の506号研究室も倉庫になっています。

私はその時初めて室内に入ったので、中がどうなっているのか知りませんでした。

実際見てみると、まるでガラクタ置き場のようでした。壊れた機械などの粗大ごみや、いすや機械の予備品、災害時の非常食や毛布など、あえてここに置く必要はない、むしろここに置いていたら邪魔になりそうなものばかりでした。



506号研究室はなかなか広く、ごみを捨てて片付けるだけで、十分広い研究室になりそうでした。

「一番奥の部屋を使わないでこっちを使えばいいのに。」

私は一番奥の507号室を見て呟きました。
507号室より506号室のほうが広かったし、日当たりなどの条件はあまり変わらないようにみえたからです。

「それはだめなの。」

先輩が入り口においてある懐中電灯を手に取りながら言いました。あまり使われていないせいか、部屋の電気は点かず、懐中電灯がないと暗くてよく見えないからです。

「この部屋電気が点かないのよ。」

「だったら、電球を変えればいいじゃないですか。」

「そういうわけじゃないの。何をしても点かないのよ。」

あたりをきょろきょろ見回しながら先輩が言いました。


「こんな噂、聞いたことない?うちの大学には研究中でも授業中でも電気を点けない教授がいるって話。」

「あ、あります。数年前にいなくなったっていう悪魔教授のことですよね。」


私も詳しく知っていたわけではありません。

ただ、都市伝説をまとめたサイトなどでは時々登場していた噂の教授なので、話自体は入学前から知っていました。入学直後に、モデルとなった教授がうちの大学にいると聞いて驚きました。
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