遙かなる時空の中で
□限りなく愛に近い憎しみ
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「…っ、ここは…?」
何もない、真っ暗ではないけれど薄暗い空間。
「これが、あの怨霊の中なんだ…」
果てのない、ただ広がるだけの場所。足元に広がるのは湖のようだが、何故か濡れることも沈むこともない。
「…どうやって出ればいいんだろう」
望美はその瞳を細め、冷静に辺りを見回した。
おそらく、外では八葉が困っているところだろう。振動が少しもないということは、望美が中にいる以上、外からの攻撃ができないに違いない。
朔では浄化はできないし、白龍はまだ子供の姿だ。
それなら。
「私が中からどうにかするしかない、か」
よっ、と望美は立ち上がり、側に落ちていた自らの剣を手に取った。
呑み込まれたところで消化されてしまうわけではないようだ。呑み込むだけで神子の神気を汚せると、この怨霊はそう考えているのだろうか。
「…バカ、だね」
これくらいで汚れを受けるなら、私はもうとっくに浄化の力を失ってる。
先ほどの戦闘で浴びたらしい腕についた血を見て、望美は皮肉に微笑んだ。
とにかく外へ出る方法を探そうと、何となく嫌な気配がする方へ歩き出す。
あてもなく進み、変わらない景色にうんざりしてきた、そんな時。
ふと、声が聞こえてきた。
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