池田屋24
□卯の刻
2ページ/7ページ
夜明けの陽光が、高瀬川の水面にさしかかる。
桝屋の裏手に回った隊士は、ぼんやりとその光景を眺めていた。
彼は、京の倉の状況を理解する術を身につけていなかった。川に面した裏口に、扉が一つある。ただの裏口だろう。もしかしたら、桝屋の主人が逃げ込んでくるかもしれない。そんな程度にしか考えていなかった。
この裏口が重要な鍵となっていることを知るには、まだ少し時間がかかる。
「おぅい、帰るぞ」
上り始めた朝日に欄干を煌めかせている橋の上から、隊士が声をかけてきた。
もたもたしていると、武田が煩いだろう。何も疑問を持たずに、呼んでくれた隊士の方へ走り出した。