豊玉発句集
□梅の花咲る日だけにさいて散る
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昨夜、近藤と歳三は、とことん話し合った。目と鼻の先まで新政府軍が迫っている。こうなったらここで徒に兵を失うよりも、北上して幕府軍と合流した方が勝算があると考えていた。
「大樹公は…… 謹慎しているんだよな」
近藤は、歳三の話は上の空のように、そう呟いた。
「だからどうした?」
呑気に人の事を考えている場合じゃねぇだろ。そう続けたいところだが、歳三は言葉を飲む。
「俺達のやり方、大樹公にとってどうなんだろうな」
月明かりが、僅かな窓の隙間から差し込んでくる。二人の顔を、その光が青白く照らしていた。