簪お静シリーズ

□時雨傘
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 秋の雨が、シトシトと降り始めた。
 賭場に向かおうとして歩いていたお静は、傘を持たずに出てきたことを後悔していた。賭場まではあとちょっとの距離だが、辿り着く頃には頭のてっぺんから爪先まで、しっとり濡れてしまうだろう。
 こんなことが気になると、たとえ賭場についても、なかなか強運が流れ込んでこないものだ。

「ゲンが悪いなぁ」

 小間物屋の軒下に立ち尽くし、雨宿りを決め込んだが、全く止みそうにない。
 このままでは賭場に着いても勝つ気がしないし、博打をやる前からツイていないとやり始めてもそのままズルズル負けるのが理だ。
 こうなったら諦めて帰るのが一番だが、せっかく出てきたのに何もせず帰るのは未練が残る。
 しばらく考え込む。
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