novel

□trick or treat?
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「ん…!」
唇に柔らかなものが触れた。
焦点の合わない視界一杯に映る、整った顔立ち。
脳が麻痺していくみたいだ。
「んんっ…ん」
神童の舌に絡められ、甘くとろけそうな感覚に飲まれた。

「…馬鹿神童」
ぽつりと呟いた。
「ごめんってば。ほら、ケーキあるぞ。」
「そんなんでごまかされてたまるもんか」
ごめん、とまた謝りケーキを差し出す神童を見る。
この笑顔、絶対に反省してない。
結局あのまま俺は神童に食べられてしまった。
俺が悪戯するつもりだったのに。
思い出してまたむくれる俺を見た神童がやれやれ、というような顔をした。
「そう言えば神童、あれなんて言ったんだ?」
「あれ?」
「あの英語。」
そう言うと神童がああ、と言って笑った。
「trick yet treat?」
「そう、それ。」
日本人とは思えない流暢な英語を聞きながら俺が頷くと神童がにやりと笑みを浮かべた。

「お菓子は要らないから悪戯させろ」

呆れて物も言えなかった。

trick or treat?
no,
trick yet treat.
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