novel

□紫陽花日和
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小学生の頃はよく神童の傘に入れてもらたりした。
でももう、俺も神童も中学生だ。
二人とも細い方とはいえ、やはり男子中学生が二人で同じ傘に入るというのは、少し無理がある訳で。

「ごめん神童…やっぱ俺、走って帰る…」
「気にするなって。風邪引くぞ。」
気にするなとは言われたものの、どうしても神童の濡れた肩が気になって仕方がない。
それに比べてあまり濡れていない自分の肩を見る。
空はまだどんよりと灰色の雲に覆われている。
雨は止む気が無いようだ…

いつもの別れ道に差し掛かる。
「あ…ここまででいいよ、走って帰るから。」
神童の傘から出る。
ここから家までは近いとは言い難いが、神童にわざわざ送ってもらうのも申し訳ない。
「いや、送って行くよ。家、まだ先だろ?」
「いいよ、だって神童の家、逆方向だし…」
ぐい、と優しく手を引かれる。
雨がぱたぱたと傘を叩く音がする。
「…じゃあ…お願いします…」
実はもう少し、神童と一緒に居たい訳で。
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