novel

□初めましての君に
2ページ/4ページ


音楽室に近づくにつれ、ピアノの音は大きくなってゆく。
とうとう音楽室の前まで来てしまった。
胸が高鳴る。
いざドアを目の前にすると、どうしたらいいのか迷う。
少しだけドアを開いて中を覗いてみた。
大きなグランドピアノや音楽家達の肖像画など、いかにも音楽室といった室内。
ピアノの影からちら、と栗毛色の髪が覗いて、胸の鼓動が一層早まる。
夢の中の彼かな、
そんな淡い夢物語が浮かんで消えた。
ちらちらと髪だけが覗くのがじれったくて、ドアに貼り付くように
して見ようとしたその時。
ガタンッ
…やってしまった…
「誰かいるのか?」
懐かしい、暖かなテノールの声。
それは夢の中で聞いた声によく似ていて、早い鼓動が更に早まる。
気が付くと無意識にドアを開け、ピアノへと歩み寄っていた。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ