offering

□手を伸ばして、 (京蘭)
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落ち着いたアルトボイスがまた頭の中で反芻した。
朝日を受けてきらきらする桃色が、目に焼き付いて離れない。
“狩屋をどこかで見たことないか?”
その一言が、咎めるような眼差しが、頭から離れなかった。

それは今朝の出来事だった。
珍しく霧野先輩が神妙な顔で話しかけてきたので何事かと身構えていたが、聞かれたのは思いもよらぬ事だった。
狩屋はシードなのではないか。
霧野先輩はそう疑っているらしい。
あまり確信はないが、狩屋はシードではないと思う。
そんなことをぐるぐると考えていたらいつの間にか授業は終わっていた。

今日の練習では狩屋が霧野先輩に足を踏まれたらしいが、全く訳が分からないというような霧野先輩の様子からしてそれも嘘なのだろう。
サッカー部を潰そうとか、そういう悪意は感じられないのだが…
何を考えているのかさっぱりわからない。
そんなことを考えていると、いつの間にか俺と霧野先輩以外、帰宅してしまっていた。
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