novel

□君ってあったかい
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「はぁ…」
吐く息が白い。
ざくざくと霜柱が音を立てて崩れる。
神童は霜柱が嬉しいのか、わざわざ舗装されていない道を選んで歩いていた。
なんだか子供みたい、そう思うと笑えてくる。
にやける口元を隠そうと、かじかんだ手に息を吐きかけた。
「手、寒いのか?」
神童が霜柱をざくざくと踏みながら、ふと、そう言った。
「まぁ…でも、平気。」
意味もなく強がってみる。
神童がふわりと笑った。
「本当は寒いくせに」
ほら、でもそんな強がり、すぐにバレちゃうんだ。
少し頬が熱くなる。
「寒くない」
また、強がる。
ざく、と霜柱の音がする。
「強がるなって」
「わ、」
不意に、手を暖かいものが包み込んだ。
横を向くと、勝ち誇ったような神童の笑顔があった。
「ほら、やっぱり冷たい」
にこりと笑う笑顔と、雲の隙間から覗いた太陽が眩しかった。
「…神童の手、あったかい。」
俺よりも暖かくて、少し大きな手を握った。
「霧野の手が冷たすぎるだけじゃないのか?」
繋いだ右手から、神童の体温と鼓動が伝わってくる。
いつの間にか霜柱の音はしなくなっていた。
「…じゃあ、あっためてよ」
そう言えば、また神童は笑って手を握り返してくれる。
君といれば、心があったかくなれるんだ。
今だってほら、胸の奥がぽか、とあったかくなる。
ほんと、
君ってあったかい。
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