novel
□紫陽花日和
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雨は嫌いだ。
じめじめするし、何より屋外でサッカーができない。
やっぱり蒸し暑くて蛍光灯に照らされた室内でサッカーをするよりも風が吹き抜ける青空の下でサッカーする方が、断然好きだ
。
早く梅雨が明けないかな。
降りしきる雨を見ながら、そんなことを考えた。
「…あ」
「わっ!?」
急に立ち止まった俺に神童がぶつかりそうになる。
「どうかしたのか?」
「…傘、家に忘れてきた…」
昨日久々に晴れたので傘を干して、そのままだったのを思い出す。
まあ、不幸中の幸いというのだろうか、雨はそれ程激しくはない。
走って帰ればずぶ濡れは避けられそうだが…
「もし良かったら俺の傘に入るか?」
いつの間にか傘立てから傘を取ってきた神童が俺に傘を差し出して微笑みかけた。
「え…いいのか…?」