Tsubaki's memory

□長靴で乾杯
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「椿、ねぇねぇ!皆も飲み終わったし〜さ〜」
「はい?」
「俺と何処か遊びに行こうよ!」
「お酒飲んだ後でですか⁈」

フェリシアーノさんってば無茶な……まぁ知りませんけどね。
兎に角、多分フェリシアーノさんなら大丈夫な気がする……うん。

酔っ払いと歩く事自体危険だって察して下さいね読者の皆さんは。

「そうだ〜!ねぇ、俺の家に泊まってってさ〜、パスタ作ってよ!」
「……はぃっ⁈泊まって行って宜しいのですか?」
「うん!だって今日、ルートも居ないしね〜」
「は、はぁ。行っても良いのであれば行かせて頂きます……」

……今、アーサーさんかフランシスさんなら変な事を考えてましたね。はい。
私は純粋ですから‼大丈夫、パスタをお作りしてあげなければ。

「じゃあどーぞどーぞ、入って〜」
「お邪魔致します……」
「パスタパスタ〜!パスタ〜」
「貴方の目にはパスタしか無いのですか……」

おっと、八つ橋が破れるところでした。では作りますか。
フェリシアーノさんはソファに座ってぽこぽこしながら私を見つめている。流石イタリア男、と言わざるを得ない、女の人への態度が丸見えで御座います。
それともパスタへの愛情?

「……フェリシアーノさんは摩訶不思議なり……」
「どうかしたの?」
「っわ!いつの間に!」

フェリシアーノさんが後ろに居ましたこれまた摩訶不思議。
怪奇現象ですかね、フェリシアーノさんの瞬間移動は。もう、全く料理に集中出来ません!

「椿小さ〜い可愛い!」
「わ、分かり切った事では?貴方より10cmは小さく育ってますからね」
「うん、菊と同じで若〜い!」
「あ、頭を撫でないで下さいませっ‼」
「椿、俺の妹になってよ〜」
「わぁわぁ恥ずかしい事言わないで下さいよっ‼」

何て猛アプローチ。私はBellaでは無いのです、もう……
私が何でそんなに可愛がられなきゃいけないんですか!
慣れてない……としか言いようが無い……泣きたい……

パスタを茹でて、麺はAl denteだ!ですね。
パスタは作り慣れているから簡単なんだけど、フェリシアーノさんに後ろから抱き締められてると作りにくい……当たり前か。

「フェリシアーノさーん、離れて頂けませんか⁈」
「え〜やだ〜」
「Al denteになりませんよ!」
「椿なら大丈夫!」
「なーりーまーせーんってば、んわぁ⁉」

フェリシアーノさんがよろけた所為で、私も後ろに倒れる。フェリシアーノさんがクッションになってたけど、これは酷い……
ワインを何杯飲まれたのでしょう……
それでもフェリシアーノさんはヴェーヴェー唸るだけ。ワインェ……

「手を離して下さーいっ‼」
「やだ〜!離さないよーっ」
「何でですか!」
「Ti amo〜」
「巫山戯ないでくださいませぇってば‼」

わぁぁああどさくさに紛れて何を言うんだよっ‼もうどうしちゃったんですかぁ‼Al denteがなんだ‼もう離して下さい‼

「ヴェ、そんなに嫌だ?」
「嫌です……恥ずかしいです……」
「あの〜、恥ずかしいとか言う方が恥ずかしいんだと思うんだけど」
「……むぐぅ、ごめんなさい」

兎に角、麺が茹で上がったという事で。そういえば、隠し味ってやった事が無いんだよね。
……バレないように、何か入れようかな。

と思ってたら、丁度何かの瓶に入った調味料を見つけました。これは脱出ゲームなのでしょうか?
これを使ってみるとしますか。

「……っと。フェリシアーノさん、出来ましたよ!」
「へぇ〜そうなのぉ〜」
「……何か酷くなってません?」
「気の所為だよ〜ヴェ〜」

勿論ほんわかとした香りの漂うパスタはAl denteに仕上がりました。誰か褒めて下さいね。
くるくるとフォークに巻きつけると、パスタを口に運ぶ。

ーー‼

「んぐっ、んむぅっ‼」

ワインだ、今さっきの調味料。

「んくっ、しかも濃い!」
「椿ぃ、美味しいねぇ〜」
「……私と、した事が……かくなる上は切腹を考えなくては……」
「椿ってば。話聞いてるの?」

強引に抱き寄せられ、唇を触れられる。何だか涙出てきた。もうフェリシアーノさんに慰められてるとしか考えられなくなってきた。
ただこの人は酔っ払ってるだけなのに……

「Bacioするから泣かないで?」
「Bacioは要らないです……もうなんかただ悲しいです……」
「もう、椿は……」
「ごめんなさい、私のミスです、本当にごめんなさ」

その瞬間、唇をまた奪われる。フェリシアーノさんは少し赤みがかかった頬で、私を見つめ、頬に手を当ててきた。

「泣かないで?俺は大丈夫だからね」
「……は、はい。有難う、御座います……」
「Il vostro molto carino!パスタを有難う!で、寝たいな〜」
「なっ!……Grazie.Lei è anche molto cool.」

フェリシアーノさんはぱぁっと顔を明るくさせて、私の頭を撫でると、私をベッドに横にした。フェリシアーノさんがその隣に寝っころがる。

「フェリシアーノさん⁈」
「俺はもう寝るね。Buonanotte!」
「フェリシアーノさん……まだ寝ないで下さい、そんなに早く眠れません……」
「ん〜、じゃあね」

フェリシアーノさんが私をぎゅっと抱きしめる。わぁ、もう私本気で兄上が二次元に行きたいって言う気持ち分かりました。恥ずかしくて蒸発してしまいそうです……

「こうやって、ぎゅーってしたら眠れるかな?」
「へ……っ、はい、有難う、御座います……Buonanotte.」
「Buonanotte!」

フェリシアーノさんは私が目を閉じるまで、私と向き合った体勢で頭を撫でて居てくれた。そうしているうちに、気がついたら私は眠って居ました。

~end~

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