Tsubaki's memory

□貴方と私の飲まれた夕方
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「アーサーさん……?」

また、がっくりしてる。ストーカーじゃないけど、家に来てみたら魂が抜けてた。
大丈夫なのかなぁ……?

「……アーサーさん?」
「あはは、アルの馬鹿……」
「スコーン余ってますよ?」
「もう食う気しねぇよ……」

やっぱりいつものイギリスさんじゃない。いつもならツッコミとか入れられるのに。
こうなる時ってパブるか落ち込んでるかしか無い。
仕方なく口にスコーンを詰めいれると、うん、味が死んでる。
でもそれは言わないでおこう。

「……貴方らしい素敵な味ですね。何かあったんですか?」
「いいんだ、一人は勿論慣れてるからな!楽しいしな!」
「アーサーさん、」

ソファで蹲っているアーサーさんの隣に座ると、直ぐに目を逸らされた。素直じゃなさすぎるって。

「な、何で隣に座るんだよ……」
「……アルフレッドさんだって、倉庫掃除が出来ないでいますよ」
「はぁ?」
「あの銃を見る度に、独立の時を思い出してしまわれるようで。時々落ち込んでしまうそうですよ」

アーサーさんはそれでも顔を上げない。やっぱり、あんなに可愛がっていたアルフレッドさんが自分にぐちぐち言って来たら、落ち込む気も分かるけど。
アーサーさんらしくないからね。

「……るっせぇ……」
「泣かないでください。空元気なんて見たって誰も救われませんよ」
「黙っててくれよ……」
「やけ酒飲むんですか?私もご一緒します」
「構わないでくれ!!」

ぴしゃりと怒鳴りつけると、また目を逸らした。アーサーさんの顔は見えないけれど、怒ってるのかな?
あまりにもいつもの紳士のようなアーサーさんじゃなくて、衝撃だけど。

「……何で俺ばっか構うんだよ。お前は所詮日本人だろ?俺はイギリス、国同士の関わりじゃねぇだろ……」
「私は本田椿です。貴方はアーサー・カークランドです。私は貴方を人としてお兄様のように見ています」

そう、私の仲間は皆人として大好き。イヴァンみたいな力でねじ伏せるんじゃなくて、本当に皆と仲良くしたい。
皆、いいお兄さん、お姉さんだから。

「私は貴方と居るのが好きです。い、言わせないで下さいよ……アーサーさんはどうですか?」
「別に……」
「……そうですか」

アーサーさんは紳士なのにあまりに不器用で。だからまた面白くて。
皆、私の仲間は守りたい。
兄上が戦を起こしてしまったのなら、兄上を倒してでも私が日本になりましょう。
私が、皆さんと仲良くやっていきたいから。

「お前は俺の事、好きなのか?」
「……貴方と居たいですよ」
「……国として、か?」
「いえ、人として。貴方と話していたいです」
「……俺と居ると疲れるぜ。離れてもらった方がこちらも好都合だ。
同盟だとは言え、そこまで仲良くなると、直ぐに裏切るだろうからな」
「馬鹿仰らないでください!!」

ツンデレも困る物だね、本当に。だから皆さんが逃げて行くって考えようよ。
でも、私もそうだから何とも言えない。

「……嘘ばかり。嘘吐きは止めてください。わ、私は貴方と居たいのですよ!ですから、離れません」
「はぁ?……離れろよ、気持ち悪いぞ」
「嫌です。約束に掛けて、私と貴方と兄上は必要最低限の関わりを持たなくてはなりません」
「……ウザったい。菊は利用してやるだけだ。さっさと帰れ」
「お断りします!!」

よくへこたれないな、と自分でも思う。心が弱いからって分かっていたのに、何故だかアーサーさんには負けなくて。
喧嘩しても、何だか楽しくて傷つかない。

「……利用、ですね。ふふ、関わりを持って頂いて光栄です」
「だから、違っ」「アーサーさん、」

最初はアルフレッドさんの話だったのに、おかしな話になってるよ。本当に、面白い人。

「……私は、貴方を裏切りません。約束致します」
「……信じないぜ、そんなの」
「なら、信じて頂けるよう精進しましょう。よ、宜しいですか?」
「……勝手にしろよっ」

~end~

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