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□虹と蒼と君
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僕はどのくらい生きられるんだろう。死ぬときは、誰に看取ってもらえるんだろう。
ななしがいい。いや、ななしじゃなきゃいやだ。
たまに、考える未来のこと。
今はまだふたりだけど、多分そのうち子供もできて、僕と笑って遊ぶんだ。
それを見て微笑んでるななしを見て僕の心は幸せな気持ちで満ち溢れるに違いない。
大好きな家族に囲まれて、笑って、もしかしたらペットでも飼うかもしれない。
気まぐれが好きな僕は猫。優しくて真面目なななしは犬。
名前は、タマとポチかな。ありきたりでも、僕たちの愛が籠もっているからいい。
それで、最後は皆に看取ってもらって逝くんだ。これ以上幸せなことはない。
この限りある時間の中でどれだけななしを幸せにしてやれるだろう。あと何回愛してるって言えるだろう。あと何回ぎゅって抱きしめられるだろう。
そんなの分かんないけど、僕がななしを愛してるっていう証をたくさん刻みたい。
僕がいつ死んでも、ななしが悲しくないように。
「……ななし?」
「なあに、ケンちゃん?」
「……好きだよ。大好き」
「……わたしも、好きだよ。ずっと」
僕はななしを後ろから抱きしめながら泣いた。それは悲しいからじゃなくて嬉しくて、幸せだったから。
「泣かないで…まだ、抱きしめられるから」
ななしは振り返って、唇にちゅっ、とキスをした。
外には綺麗な虹がかかっていた。
そしてななしは少し悲しそうな笑顔をしていた。