サルビアのきもち
□十
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2回戦を制した白ひげ海賊団は無事にワーズを奪還した。
「う"あ"あ"…お前ェら、信じてたぞぉ!」
感極まった様に涙を流しながらワーズはナツメの手を取ると、上下にブンブンと振り回した。
「ワーズ、暑苦しいぞ。」
「……汚い。」
「………手、離せよい。」
相変わらずドライなシムとナツメに冷たくあしらわれ、マルコにはベリッと音がしそうな程の勢いでナツメから手を剥がされる。
「……親父に逢いたい…」
皆のそんな仕打ちにがっくりと肩を落としたワーズは、ナミュールに宥められながら応援席に向かった。
『さァ、ゲームの花形!「コンバット」、フィールドメイクが始まるよ〜!出場選手は前に出てきてくれ!』
アナウンスが流れ、それを聞いたナツメはよっこらしょと立ち上がる。次いでセコンドとして登録していたマルコもそれに続いた。
「ナツメ、程々にしてやれよ〜!」
そんな姉にエースが玉蒟蒻を頬張りながらニヤリと笑いつつ声をかけるが、振り向いた彼女は弟を上回る程にニヤニヤとしながら、
「加減の仕方なんて、分からないよォ〜?」
と言い放ち、隣にいたマルコは顔を青くした。
呼び出されるままに向かった先には砲台があり、どうやらその弾の落下地点がバトルフィールドになるらしい。
しかし、外輪船以外ならどこがフィールドになろうが関係無いナツメは、もの凄く面倒くさそうな顔で、かつもの凄く適当にフォクシーに合わせて砲台を回す。
ドゥン!!
重量感の有る音が辺りに響き渡り、次いでやや興奮ぎみにイトミミズが口を開いた。
『フィールドポイントが、今!決定〜!偶然にも、我らがセクシーフォクシー号甲板に砲弾が着地だぁ〜!』
「リトルモビーじゃ無くてラッキーだねい。」
戻ってきたナツメにマルコが珍しくにこやかに声を掛ければ、彼女は再びニヤニヤとしながら口を開いた。
「んじゃ、手加減いりませんね。」
「…加減、出来るのかよい?」
「出っ来ませぇ〜ん!」
そんなもっともなツッコミに彼女はケラケラと笑いながら答え、それを見たマルコは、
(……やっぱ、ナツメは根っからの海賊気質だよい。)
と内心冷や汗をかいたのだった。
彼等が呑気にそんな会話を交わしている頃、実はイトミミズが丁寧にルールの説明をしているのだが、ナツメの場合は言ってみれば「ただそこにいればいい」
という存在なので、とにかくフィールドの外に落ちない様にさえ気をつければ良いだけだ。
「とにかく、ナツメは余計な事はしないでドンと構えてろい。」
そうセコンドのマルコも言う事だし、せっかくの機会なのでナツメは自身の能力の発露をじっくりと観察するつもりでいた。
それはマルコ達白ひげクルーも同じで、今回ほどナツメが遠慮無しに能力を発動させる事などそうそう無い為に、好奇心半分、ビビり半分でバトル開始を心待ちにしているのだった。
『さァさァ!お待たせしました!いよいよゴングだ!まずはレフトコーナーより入場!我らがオヤビン!!"銀ギツネのフォクシー"!!』
「フェッフェッフェ!!」
やはり変なバックミュージックに合わせて、グローブを装着したフォクシーが高笑いを上げながら無駄に威風堂々と登場する。
『さァそして対するのは世界最強と名高い、四皇"白ひげ海賊団"の……じ、事務員?……え?いいの?………失礼しました!え〜、ライトコーナーより入場!!"白ひげ海賊団"が誇る事務員!ナツメ〜〜〜っ!!』
「…………。」
ライトコーナーからも、大黒天コスにグローブを装着したナツメがぽてぽてと緊張感0の様子で歩いて入場した。
『デービーバックファイト運命の3回戦、「コンバット」!始まるよ〜〜〜!!!』
戦いの火蓋は切って落とされた。
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