サルビアのきもち
□九
1ページ/3ページ
『さぁ、両チーム一斉にスタート!ーーーーーと同時にフォクシー海賊団お邪魔攻撃!!白ひげ海賊団「タルシャーク828号」、空に向かってハイジャ〜ンプ!』
1回戦目が始まったが、開始早々に様々な妨害工作に苛まれナミュール達は苦戦していた。
だが肉体派のワーズとハンズが力一杯オールを漕ぐのに加え、魚人であるナミュールが泳いで船を引っ張っているので速度的にはいい勝負を繰り広げている。
「火拳ーーー!!」
ドォォォン!!
「邪魔だよい!」
ゲシィッ!!
「鮫瓦正拳!」
バシャァッ!!
次々に繰り出される妨害も陸上のメンバーの機転やナミュールの奮闘により、何とかかわして出場メンバーが遂にゴールを視界に捉えた時、それは起きた。
「"ノロノロビーーーム"!!」
どこからともなく聞こえてきた叫び声に、ナミュールは何が有ったのか理解出来なかった。
ただ、気がつけば敵の「キューティワゴン号」が既にゴールをしていて、必死に泳いでいた自身もオールを漕いでいた二人もゴール手前で荒い息をついていたのだ。
暫くしてやっと陸に上がって来た3人は一様に暗い顔をしている。
「すまねぇ…何だか急に回りっつーか、自分っつーかがスローになっちまって…」
ナミュールが申し訳なさそうに肩を落として言う。マルコはそんなナミュールの肩に手を置くと口を開いた。
「仕方ねえよい。」
「悪魔の実、ですかね?」
「……多分ねい。」
「超人系か?」
「"ノロノロ"って言ってたしね。」
エースも交えてフォクシーの能力について考察してみる。
少なくとも相手の能力の片鱗が見えたのだから対策を立てればいい、そうナツメ達は考えた。
『第1回戦決着〜〜!さァさァでは待望の戦利品!!オヤビン!どうぞ〜〜っ!』
司会のイトミミズが声高らかに言うと、会場にドラムロールが鳴り響く。
「まずは一人目…俺が欲しいのは………!!お前…!」
フォクシーが指差した先にいたのは。
「2番隊戦闘員、ワーズ!!」
「俺かよ!?」
指名されたワーズはあっという間にステージに連行され、フォクシー海賊団のトレードマークとも言えるマスクを無理矢理付けられる。だがワーズの場合元々が「ザ・海賊」と言わんばかりの風貌なので全く違和感が無いどころか海賊っぽさ五割増しになり、白ひげサイドからは僅かに失笑すら洩れている。
「フェーッフェッフェッ!この筋骨隆々の見るからに戦闘員、うちの海賊団にぴったりだな!」
フォクシーは満足げに頷くとワーズのスキンヘッドをペシペシと叩く。
だが。
「…なんだ、ワーズか。」
「ワーズならいいよい。」
「達者でな、ワーズ。」
「力及ばず悪ィな、ワーズ。」
「ワーズ、お前の勇姿は忘れない。」
「すすすすみません!」
ナツメ、マルコ、エース、ナミュール、シム、ハンズ。皆が皆、物凄いドライな反応だ。
「「えーーー!?」」
そんな白ひげ海賊団の面々にワーズ本人のみならずフォクシーまでもが驚きの叫びを上げた。
『おぉっとォ、何と言う事だ!白ひげ海賊団、まさかの仲間切り捨て作戦かァ!?信じられない!四皇とは人非人の集まりかァ!?』
さらには司会のイトミミズまでもが批難の声を上げるが、ナツメ達は一行に気にした様子も無く2回戦の準備を始めた。
たた一人、エースだけが振り向くとニヤリと笑い、
「ガタガタ煩ェよ。すぐに取り返してやるから、お前ェら芋洗って待ってろよ!」
と吠えた。
(…洗うのは首だよ、エース。)
ナツメは呆れた様にため息を溢した。
.