サルビアのこころ

□壱
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世に四皇と呼ばれる大海賊団、白ひげ海賊団の1番隊隊長のマルコはその日、親父と呼んで慕う船長エドワード・ニューゲートの為の薬を探し求め、休む間も惜しんで島から島へと飛び回っていた。

常日頃から加齢により体調を崩しがちだが元来屈強である親父こと白ひげは、先日立ち寄った島でたちの悪い感染症をもらったらしく、数日前から高熱に魘されていたのである。
もちろん彼等の家であるモビーディック号にはお抱えの船医がおり、その船医率いる敏腕の医療班が全力で治療に当たってはいるのだが、どんな抗生物質を使おうとも目立った効果を挙げられずにいた。
ならばと飛行出来るマルコがその機動力を生かして近隣の島の医者に次から次へと当たったのだが、それも目立った成果は見つけられず、仕方なしに彼は帰還の途についた。
発熱しているのだから今親父の身体は謎の感染症と戦っており、熱以外の症状は無のいで時間はかかったとしてもいずれ快方に向かうだろう。
だが親父はいくら最強と謳われる海賊だったとしても、その肉体は確実に老いており、その事実が息子達により焦燥感を与えていた。


「…いったい、どうしたらいいんだよい……」


大空を優美な不死鳥の姿で舞いながらも、マルコはまるで重石を抱えた様に沈んだ気持ちのまま呟いた。

そんな時である。

見渡す限りの大海原…のはずの下界に、僅かに混じる異質な色に気がついた。
常ならばその様な小さな事をさして気にしないマルコだったが、今はどんな情報でもいいから見逃したく無いという気持ちから、その「色」に近づいた。
上空を旋回しながらよく見れば、それはこの大海原を旅するには余りにもお粗末な小さなボートで、その上に横たわった「もの」はさらに異質な輝きを放っている。


「……花、嫁か?」


純白の輝く衣装を身に纏い、頼りなげに揺れる小舟に横たわるそれは、まさしくマルコが呟いたものであるが、しかし死んでいるのかピクリとも動かなかった。
だが次の瞬間、彼の常日頃から眠たげな細い目は限界まで見開かれた。
何故なら、横たわる花嫁の手元には彼もよく知る渦巻き模様の禍々しい果実が転がっていたのだから。



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