小説 (大人向)
□架空体験
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架空経験(7)
いつも聞き慣れた、そう思っていた音だったけどシンとした部屋にその音だけが響くと、心臓が驚きと興奮で跳ね上がった。
英二は頭をのせていた枕に夢中で噛み付いた。
誰かに気がつかれてしまうかも知れない…
けど、もう止める事も出来なければじっと耐えて収まる熱でもなかった。
「は…はぁ、はぁ、く、ぅ…っ」
今度は卑猥な音が出ないようにと、ゆるく根元へと掌全体を下げてみたが自身の流した蜜を全体に擦り付ける形になり、よけい粘着質な水音が大きくなるだけだった。
「いやらしい音…、ねぇ英二、そう思わない?」
想像してもないのに、ふと以前セックスの最中にかけられた言葉が頭を過ぎり、ビクンと腰が跳ねた。
聞き慣れた声が自分を煽る。
違う…
違うっ!
そうその時は頭を左右に大きくかぶりを振ったが、今、独りで自室でこんな行為に及び、ろくにまだ刺激もしていないのにこの状態の自身の熱を思うと否定できない現実が恥ずかしく、消えてしまいたかった。
「ぃ……あっ」
違う、不二がこんな躯にしたんだか…らっ!
そう居直り、英二はもうどうしようもない熱を解放するために、小さな音を耳にいれないように緩急を付け自身を擦り上げた。
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