小説 (大人向)
□架空体験
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架空経験(3)
だめだよ
一度思い出しちゃうともう…
くっと下腹部に無意識に力が入ったのが判った。
ひくんと喉が鳴る。
な、なに考えてんだよ俺…っ!
そんなことを今思い出したいわけじゃないじゃんっ!!
そう冷静になろうとし、またぎゅっと瞼を閉じても自分の中の不二が
あの自分が好きな声で
甘く
低く
耳元で囁いてくる…。
「…ゃだ、不二っ」
「やじゃないでしょ?
こんなにしちゃって…」
そうじゃない
そうじゃないっ
今思い出したい不二は、不二の表情はそんな甘美なものではなくって――…
ただ微笑んで自分をみていてくれる不二、それだけでよかったのに…。
「とまんない…よぅっ」
自分を見る不二の表情が躯を重ね性行為に及ぶ時の独特の微笑みにどんどん凌駕されてゆく。
ぎゅっとパジャマの胸の辺りを鷲掴みにする。
胸がキリキリと痛い…、けど本当に痛いのはそこじゃなくって―…
「ふじぃ…不二
なんとかして…よぉっ」
置いていかれたような
独りぼっちにされたような
酷い孤独感が自分の心を襲う。
。