小説 (大人向)
□架空体験
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架空経験(2)
――――エージ…
「不二…?」
思わず声を上げ、寝っ転がっていた躯の上半身だけを起こしそう広くはない部屋を高い二段ベットの上から見下ろした。
それと同時に自分だけの世界に閉じこもっていた英二がふと我に返ると、急にいろんな雑音が耳に流れ込んできた。
一階から聞こえる大きなテレビの音量は今両親達がどの番組を見ているか判るほどで、隣の部屋からは姉が仲の良い友達と喋り込みくすくすと笑う声が耳に入った。
気のせい…に、きまってるよな…。
どこか気落ちして英二はまた枕へと頭を戻した。
再び見慣れた天井を仰ぎ見る。
不二…
不二…
不二…。
「なに? 英二…」
ぎゅっと敷布団のシーツを掴みながら、不二の名を心で唱えたら
心の中の不二が自分へと返答を返してきた。
その耳元で囁かれているような声に切なさでビクンと小さく躯が震えた。
幻影――…。
今度は先程のように瞼を開け体を起こすことをせずに、自分の中にいる不二に呼びかけ対話した。
「不二、不二…」
「どうしたの――…英二?」
けれどそう呼びかけ、想い描いた不二は…
「ここ、
もう熱くなってるね――…」
ばっと慌てて両目を開き、英二は自分が想い描いた不二を掻き消す。
けれど一度リアルに想い描いた不二はそう簡単には消えてくれなかった。
ドキドキと急に高鳴った心音。
英二はぐっと胸を押さえ、早く打つ脈拍、大きく体内で鳴り響く鼓動を抑えようとした…
けど――…。
。