小説 (大人向)
□至近距離
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「はいはい静かにぃー…
じゃぁ、ん〜…129ページから行くぞぉ」
少し間の抜けた村上先生の授業開始の声でまたクラスは一応静かになった。
僕はまだ一成に向けられた後ろの席へのクラスメイトの視線の緊張から、解き放たれない英二に
「と、言う事で教科書見せてね英二…」
と微笑んで見せた。
「な、なんでさっき…授業始る前に言わないんだよ〜UU」
「だってさっき教科書を出そうとして気が付いたから…」
「不二は何時も授業前に机の上に教科書置いてるのに今日は置いてないから変だなぁ…とは思ってたけど〜Uうう〜U
俺さっきお菓子あけようとしてたのに、皆がばぁ〜ってこっち見たから思わず俺が怒られんのかと思ってビビちゃったじゃんかよぉ〜U はぁ…」
コソコソと隣同士ぐらいしか聞こえない声で話しながら、英二の方から僕の席に机をくっつけてきてくれた。
「でも珍しいな、不二が教科書忘れるなんて…ん〜…始めてじゃないの?」
「そうだね」
小さな机だけど2つ並べると割と大きく感じる。
「ほい、教科書」
もう黒板前では村上先生が授業を始めていた。
「ビンゾコちゃんノートもアンマリ取らなくっていいから楽だよなぁ〜v」
「でもだからこそ聞いてないと判らないけどね」
普通に席が隣なだけでも随分近くに英二を感じていたけど…
流石に机を並べての隣の距離は、静かな教室では英二の吐息も聞こえてきそうだった。
僕が英二の開かれていない教科書を2人の机の真中に置いて開こうとすると、英二の肩に自分の肩が触れた。
英二はそんな事はお構いなしにさっき途中で中断した御菓子の袋を開けて、クンクンとにおっていた。
「にゃっvこれいい匂い〜v」
幸せそうに僕のほんの…
ほんの20cm程先で微笑んでいる。
可愛いな…。