小説 (大人向)
□至近距離
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「今日も寝るの?」
「ねなぁ〜い!今日はね御菓子持って来たからさ〜お菓子を食べながらビンゾコちゃんの話を聞こっかなぁ〜って思ってるんだよなv」
「そう…」
とてもキチント授業を受けるぞ!と言う意気込みには聞こえなかったが英二は鞄の中からゴソゴソとお菓子を取り出し机の中に移動させた。
数秒後にそれを合図にしたかのように、チャイムが鳴り響き村上先生が無言で…でも片手を挨拶代りに挙げて6組に入って来た。
少しザワザワしていた教室も村上先生が教壇で教科書を広げるとシン…っと静まり返った。そして各自好きな事を適当に始めているのが解る…。
英二は英二でウキウキと御菓子の袋をこっそり開けようとしていた。
僕はそれを余所目に「先生」と手を上げ席を立った。
「んー…? なんだ不二か?」
「はい、すみません教科書を忘れたので菊丸君に見せてもらってもいいですか?」
ざわっ…。
静かだった教室がざわめき、6組の生徒達が一成に教室の一番後の窓際の席の僕を態々振りかえって見るのが判る。でも僕はそんな視線を気にもとめず先生のみに目線をシッカリ合わせ返答を待つ。
「珍しいな不二が忘れ物…か、いいぞ、菊丸に見せてもらえ」
「はい」
椅子に座ろうと腰を降ろす時にちらっと英二を見たら、僕に集められた視線のせいで横の席の関係ない英二がお菓子を慌てて隠しビクビクと緊張しているのが判った。
そして僕が忘れ物をした事への珍しさか、ヒソヒソと小声でクラスの中から小さな話声があっちこっちから上がる。
そんな英二の様子とクラスの雰囲気を見て僕は心の中で可笑しくて笑い出しそうになるのを必死で堪えた。