小説 (大人向)
□至近距離
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「やっほぉ〜♪次ぎはビンゾコちゃんじゃぁ〜んv」
英二は次の4時限目の村上先生の教える社会が大好きだ。
元々英二の中では成績がいいのもあるのだろうけど、社会が好きらしくなによりも村上先生がお気に入りらしい。
その証拠に英二特有のあだ名付けで先生に「ビンゾコ」と命名し
さらに「ちゃん」まで付けて呼んでいる。
すでに1年の時からのお気に入りの先生らしく英二が「ビンゾコちゃん」と呼び出して数日後、青春学園であっと言う間にそのあだ名が村上先生に定着してしまった。
僕は流石に「ちゃん」までつけるのはどうだろう…と思うのだが英二は
「だって可愛いじゃんか、あの先生!」とにこにこして言たっけ?
村上先生はもう来年定年退職される程のベテラン教師でこの青学にも随分長い間勤務されている。
目が悪く底の厚い眼鏡をかけ、それをクイッと歳の割に物凄く早い速度で上げるのが癖らしい。
英二のデータなんだけどね?(笑)
その眼鏡がビンゾコ…瓶の底のようにあついので「ビンゾコ」そしてその眼鏡を上げる手早い仕草が可愛いらしく「ちゃん」まで付いたそうだ。
僕は英二とは別の理由だけどこの先生は好きだ。
教科書には載っていない僕達がまだ経験しない事まで教えてくれる。
しかもその教え方が自分の人生経験などもくみ入れて話すので、興味深く面白い。
英二も飽きる事無く聞き入っている事が判る。
…でもそれもたまに、なんだけどね。
人辺りも善くあまり怒る事もなく、その上目も悪く少し耳まで遠くなってきたらしい村上先生は授業中教室をウロウロする事もなく教壇の机から離れない。
多分沢山ある授業の中で一番何をしても怒られる事もなく、ばれる事も少ないと言える。
教室ではメールを打つ者、早弁をする者、睡眠を貪る者――…様々だ。
クラスメイト達が自分の好きな事をやっているのが一番後の席からよく見える。
勿論英二はよく眠りー…を実行していた。