文*跳

□自販機のココア
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「獄寺、明日のチョコ楽しみにしてんなっ」

2月13日。
いきなり言われた言葉。

「は?こっちじゃバレンタインは女の行事だろ」
自分には関係ないと思っていた俺、用意なんてしていない。
「あ、そーだよなーっ」
笑っていった山本に、バカかお前、とか返して。

その後あきらかににテンションを落とした山本。
なんか、悪い気がして。







自販機のココア







翌日。

靴箱に食いもんいれるのはどうかと思うぞ。
入っていたチョコを適当にもって歩く。

学校中が騒がしい。
チョコだのなんだの、どうでもいいだろ。
「あ、獄寺君、これ。」
十代目のもとにいくと、渡されたひとつの小さな箱。
「母さんがバレンタイン、いつも感謝してる人に渡すもんよ、って無理矢理。」
恥ずかしいけど、と照れたようにいった十代目。

バレンタインにそんな意味があったなんて。
十代目に、用意すればよかった。

慌てて買いに走ろうとすると、十代目に止められる。
「そんな、いいよ!母さんに言われただけだし!」
優しい言葉に泣けそうになる。
ホワイトデーには10倍返ししよう、と心に誓った。


十代目とお話ししていると山本が現れた。十代目からチョコをもらって、にかっと笑う。
手には、紙袋にはいった、大量の箱。
なんか、よくわかんねぇけど、ムカついて。




帰り道。

いつもどおり、三人で話しながら帰る。
十代目をお送りして、山本と、二人。
日暮れは早くて、もう真っ暗になった、寒い道。
いつもよりなぜか会話が弾まなくて。

自販機が、あった。
「あれ、獄寺喉乾いた?」
「寒ぃんだよ」
120円いれて、ココアのボタンを押した。
熱すぎるくらいのアルミ缶で、冷えた手をあたためる。

そしてまた歩き出して。


「じゃあ、獄寺また明日な!」
たいした話もせずに、わかれる道。
手を振る山本に、持っていた缶を投げつける。
「これ、冷めたからもういらねえ」
見事キャッチした山本に、背を向けた。
「はは、獄寺ひでーのな」

笑った山本。
俺はといえば、今顔が熱い。

山本が鈍くて良かった。



たった120円のココア。
俺のバレンタイン。

これで、許せよ。









end?
















おまけ(?)



3月14日。

「獄寺、これ!」
「は?」
「今日ホワイトデーだろ?ココアのお返し!」
「はぁぁぁあ!?」


こんどこそ、end.。

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