文*跳

□ヤキモチ。
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整った顔しやがって。

「きゃーっ!」

無駄に目立ちやがって。

「かっこいーっ!」


……なんでんなモテんだよバーカ。





ヤキモチ。






「おい」

機嫌悪く声をかけると、山本は無駄に爽やかな笑顔を振りまいてよってきた。

「獄寺!なんかようか?」

にっこにっこして、なんだか楽しそうなのが妙に苛つく。

「あのうるせー女共、黙らせろや」

今は体育の時間。
この体育大好きの、無駄に活躍する馬鹿に女共の黄色い悲鳴が五月蠅い。いつもより、さらに耳につく。

「? なんの話だ?」

そして、この馬鹿は無自覚なんだ。
ち、と舌打ちをして、馬鹿を睨んで言う。

「てめぇのせいで女共がうるせーんだよ。黙らせろ。」

山本はちら、と女共に視線を向ける。
その動作で悲鳴がまたデカくなった。
そして俺に視線を戻して、首を傾げて言い放った。

「んー、俺のせいなのか?」

ぷちっ、と、自分の頭から音が聞こえた気がした。

「てめぇのせいだボケ!!」

切れた俺を、ほんの少しだけ、焦った様子で宥める山本。どーどー、なんて言って、落ち着いた様子が俺の苛立ちをましていく。うぜぇ。イライラする。

「まぁまぁ獄寺、いいじゃん別に。」

気にしてない、というように笑う山本に、さらに募る苛立ち。
もう嫌になった。サボる。決定だ。
決め込んで、山本の前から去ろうとした瞬間、腕を掴まれた。

「っんだよ!」

そのまま引っ張られて、隠れた耳元に息が触れるほど近寄せられる。
そして山本は、嬉しそうに言った。

「ヤキモチ、妬いてくれてんのな」

停止する俺。
今振り返ったら確実にこいつはまた、ニヤリと笑う。
俺は、頭に血が上っていくのを感じた。

「…っ、ざけんな!!自惚れてんじゃねえよ!!」

振り向かずに、走り出す。
不本意だ。最悪だ。最低だ。
後ろから山本がへへっと笑う気配を感じた。



本当に不本意だが、
……わかった、俺の苛立ちの理由。
最悪だ、最低だ、…恥ずかしすぎる。
きっと次に会うときは満面の笑顔だろう。
うぜぇ。

もっと不細工だったらよかったのに。
もっと地味だったらよかったのに。
もっと、モテなかったらよかったのに。


そうしたら、
あの馬鹿は、俺だけのものだったのだろうか。


そんな考えが頭をよぎって、急いで消し去る。
こんなこと、ばれたら一生の恥だ。

とりあえず、顔の火照りを冷ますため、屋上へむかった。





end.

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