文*跳

□誰も知ることのない想い。
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彼が、好き。
誰にも言わないけれど。
彼も…俺も、男だから。
心に秘めたる想い。
この立場のままでいたいから。
こっそり、見つめていた―誰にも見つからないように。
そしてわかった。
彼はあいつが好き。
俺じゃなくて。
いつもいがみ合っている、あいつが。
あいつも、男なのに…。
そして、あいつは気づいてない。
鈍いから、これからも気づかないだろうなぁ…。
彼は…気づいているのかな、あいつをみつめていることに。
あいつに、恋、していることに。
いやきっと気づいてない。
彼も…鈍いから。
俺だから―彼を見ていた俺だから、気づいた。
彼が好き。
誰も知ることのない想い。


「十代目!」
俺を呼ぶ声。びっくりして、俯いていた頭をあげると、目の前には獄寺君。
「………な、何?」
聞くと、目の前で顔が傾いた。
「どうしたんすか?ぼーっとしちゃって。」
「あ、うん…ちょっと考え事してて。」
俺は苦笑いで答える。
「何かお悩み事ですか!?俺でよかったら…」
「なんだツナ、悩み事か?」
ぱっと、獄寺君の頭の上から山本が顔を出した。
獄寺君は、ゲッ、なんて言って。
「おまえは黙ってろバカ山本!」
いつものように睨みあげる獄寺君。
山本もいつも通りで。
「…や、大丈夫。平気だよ。」



この関係が、好きだから。
彼を、恋愛感情含んで、好き。だけど、あいつのことも、友達としてだけど、好き。
だから、誰にも言わない。
彼が好き、ってこと。
彼が好き。
そう、誰も知ることのない想い。

これで―いいんだ。








誰も知ることのない想い。












「俺は知ってるけどな。」ニッ
窓の外で、赤ん坊が一人、笑った。


end.
*****
08.11.2.

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