夢*跳

□For you who love Tuna
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「あ、ツナくんだ」
十代目を見つける度に、こいつの顔は幸せそうに綻ぶ。
その顔を見る度に、俺の心はきゅっ、と締め付けられるようで。



「獄寺くん、聞いて聞いて」
屋上で、授業をさぼってぼーっとしていたら、目の前に小さな頭がぴょこんと出てきた。
「……んだよ」
ぶっきらぼうに返事を返すと、嬉しそうに語り出して。
「あのね、ツナくんがね、」
嬉嬉として、十代目の話題を出す。

こいつは、クラスで俺を恐れない、たった三人の中の一人。(後の二人はもちろん十代目と山本だ。)
初めは話しかけられても放置していたが、あまりにもしつこいので話を聞いてやったら、『友達になりたい』とかぬかしやがった。
無視しようが、屈託もなく話しかけてきて。どんなに酷い扱いをしようが、その扱いにどんなに傷つこうが、翌日にはまた屈託なく話しかけてきて。
しょうがないから話を聞いてやっていたら、ある日、こんなことを言い出した。
『あたし、ツナくんのことが好きなんだ』

その瞬間、俺は悟った。
こいつ、十代目に話しかけるために俺に近寄ってきたんだ。

俺は、十代目を守ろうと、近づく奴らを威嚇し続けていた。
誰も近づけなけいようにしていた。
だから、まず俺に近づいた。そして、十代目に。

…しかし俺は、そのことを知ってもこいつを突き放せなかった。
十代目に近寄る危険分子は排除しなくてはいけないのに。
『十代目はお前にはもったいねぇ』
そういった俺に、
『…知ってる』
なんて、切なそうに笑ったこいつの顔を見たら、俺が、泣きたくなって。


「獄寺くん!聞いてる?」
考えごとをしていたのを見透かすように、咎められた。
意識を戻した俺をみると、また話し出す。
嬉しそうに、笑顔で話す姿を見て、俺の心はヅキンと痛んで。

俺に、近寄ってきたくせに。
「それでね…」
俺に、話しかけたくせに。
「ツナくんが…」
俺に、俺を、俺の心を。

バンっ

気づいたら、隣で一生懸命に話していた顔が、目の前にあって。
俺はその横に手を打ちつけていた。
「…獄…寺…くん?」
驚いたような顔をして、俺の名前を呼んで。不思議そうに傾く顔。
「そんなに…十代目が、いいかよ…っ」
喉からでた声は、自分でも思うほどに辛そうで。
バッと離れて、屋上を飛び出た。



あいつは、十代目が好きなんだ。
俺のことなんて、なんとも思ってなくて。
ただ、十代目に近づくために、俺に話しかけただけ。

やめろ、もう俺に近づくんじゃねえ。
俺は、俺の心は、悲鳴を上げていて。
助けてくれよ。
もう、俺に、近づいて、くるな。











end.

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