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【孤独な月の行方(中編)】






窓から差し込む月の光が、今日は妙に眩しい。
闇が濃くなるにつれて月は明るさを増していくようだ。



こういう日は月に誘われて、夢を見ているような感覚に陥るから・・
月明かりに照らされていると、夢と現実の間を彷徨って
必死に保っている心が崩されてしまいそうになる。

気を抜くと涙で視界がぼやけそうになるのを何度も打ち払った。






部屋の時計に目をやると針は深夜を告げていた。
さすがにこんな時間では、もう彼は来ないだろう。

そう思って、雛森さんの様子を確かめてから静かに席を立ち上がった時、
不意にドアの方で人影が揺れた。



一瞬の緊張。
体を強張らせてから、そちらの方に視線を移す。



部屋の隅。
少しだけ月明かりが届くその場所に浮かび上がったのは、
羽織の白。
月の光を受けて暗闇の中でもわずかに輝く銀髪。





―ああ。
 やっぱり夢を見ているのだろうか。






「桜之・・か?」


だけど。その声は確かで。





「うん。」



声がこもって、はい。と答えられなかった。

久し振りに聞くその声に、胸が締め付けられるようになる。
夢でもいいと思っていたけど、どうしようもない複雑な胸の痛みで
これは現実なんだと思い知る。











「帰って・・きたのですね。」




「・・ああ。」




言いたいことも、聞きたいことも沢山あったはずなのに。
あんなに会いたかったのに、何一つ言葉にならない。





「雛森さん、最近はだいぶ具合も良くなったんですよ。」



「・・そうか。」




「それに、前より笑うようになった。
 ・・外に出て散歩もするし、話してくれるようにもなったし。」




私の口から出てくるのは雛森さんのことばかり。

折角会えたのに。
何をやっているんだろう。






日番谷君は腕を組んで壁に背を預けて、
遠くから雛森さんを見ている。




私が口をつぐめば、流れるのは沈黙。





見た目は何も変わらない。
私が好きな日番谷君のまま。

それでも、何かを抱え込んでいるような瞳は
いつもよりも深くて。

私には到底理解できないような
その深さが私の心を更に締め付ける。






「ここで。雛森の傍にいてくれたんだな。」



そう言うと、スッとその場を離れて、
雛森さんを挟んで私の向かい側に立った。




・・・傍にいてくれた。

現世に向かう前の日番谷君の一言が
私をここに閉じ込めたようなものなのに。



そんな言い方はずるいと思う。









相変わらずのスローストーリー。
あまりにもスローなので、予定外の中編でまた区切ることに・・。
隊長が深夜に雛森ちゃんの所に来たのは
多忙だったからですよ(笑)一応。
後編もすぐにアップします!(希望込み;)


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