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【孤独な月の行方(中編)】
窓から差し込む月の光が、今日は妙に眩しい。
闇が濃くなるにつれて月は明るさを増していくようだ。
こういう日は月に誘われて、夢を見ているような感覚に陥るから・・
月明かりに照らされていると、夢と現実の間を彷徨って
必死に保っている心が崩されてしまいそうになる。
気を抜くと涙で視界がぼやけそうになるのを何度も打ち払った。
部屋の時計に目をやると針は深夜を告げていた。
さすがにこんな時間では、もう彼は来ないだろう。
そう思って、雛森さんの様子を確かめてから静かに席を立ち上がった時、
不意にドアの方で人影が揺れた。
一瞬の緊張。
体を強張らせてから、そちらの方に視線を移す。
部屋の隅。
少しだけ月明かりが届くその場所に浮かび上がったのは、
羽織の白。
月の光を受けて暗闇の中でもわずかに輝く銀髪。
―ああ。
やっぱり夢を見ているのだろうか。
「桜之・・か?」
だけど。その声は確かで。
「うん。」
声がこもって、はい。と答えられなかった。
久し振りに聞くその声に、胸が締め付けられるようになる。
夢でもいいと思っていたけど、どうしようもない複雑な胸の痛みで
これは現実なんだと思い知る。
*
「帰って・・きたのですね。」
「・・ああ。」
言いたいことも、聞きたいことも沢山あったはずなのに。
あんなに会いたかったのに、何一つ言葉にならない。
「雛森さん、最近はだいぶ具合も良くなったんですよ。」
「・・そうか。」
「それに、前より笑うようになった。
・・外に出て散歩もするし、話してくれるようにもなったし。」
私の口から出てくるのは雛森さんのことばかり。
折角会えたのに。
何をやっているんだろう。
日番谷君は腕を組んで壁に背を預けて、
遠くから雛森さんを見ている。
私が口をつぐめば、流れるのは沈黙。
見た目は何も変わらない。
私が好きな日番谷君のまま。
それでも、何かを抱え込んでいるような瞳は
いつもよりも深くて。
私には到底理解できないような
その深さが私の心を更に締め付ける。
「ここで。雛森の傍にいてくれたんだな。」
そう言うと、スッとその場を離れて、
雛森さんを挟んで私の向かい側に立った。
・・・傍にいてくれた。
現世に向かう前の日番谷君の一言が
私をここに閉じ込めたようなものなのに。
そんな言い方はずるいと思う。
相変わらずのスローストーリー。
あまりにもスローなので、予定外の中編でまた区切ることに・・。
隊長が深夜に雛森ちゃんの所に来たのは
多忙だったからですよ(笑)一応。
後編もすぐにアップします!(希望込み;)