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□最高の時間をきみに
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「遅かったな」
「……お、ん…」
夜景をバックにした景ちゃんは人気モデルやアイドルなんかよりもずっとずっと格好良い。
まるで絵本から飛び出して来たどこかの王子様みたいだ。
黒のシンプルなスーツだけど、気品に満ち溢れている。
服に着せられている俺なんかとは違って、めちゃめちゃ格好良く着こなしている。
本当に、本当にカッコイイ。
「どうかしたか?」
「……ううん…」
そんな景ちゃんを直視出来ず、俺は下を向いた。
言葉が出てこなくて、漸く絞り出した心なしか震え、それも小さいものだった。
「そうか?あ、ネクタイ曲がってる」
「!?」
ち、近い…!!
ネクタイを正してくれようとしたため、必然と距離が近くなる。
相手にも音が聞こえるんじゃないかってくらい、心臓がバクバクと脈打つ。
耐えきれず、俺はギュッと目を瞑った。
「ほら、出来たぞ?」
「………」
「忍足?」
「……は、はいっ…」
「そんな緊張すんな。リラックスしろ」
髪を優しく撫でられる。
優しく温かい感触に、俺はそろそろと目を開けた。
撫でる手つきと同じくらい優しい顔で笑っている景ちゃんは、少し待ってろと言葉を残して隣の部屋に入って行った。
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