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□全部お前のせい
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「………」
授業と女子の恐怖集団(最早一種の宗教に近い)からこっそり抜け出し、忍足が住んでるアパートの一室の前に立つ。
何か作業でもしているのか、ドア越しにガチャガチャと音がしている。
インターホンを鳴らすと、はーいと中から間抜けな声が聞こえた。
「俺だ、跡部だ」
「……お、忍足くんは現在留守でございます」
「次ふざけたら無期限で口利かねぇぞ」
「うぅ…、何で来たん?まだ授業中やんか!」
「いいからとっとと開けろ」
少し間を置いてから、忍足はそろりとドアを開けた。
眉を八の字にしてこちらを伺うよう表情は、捨て犬を彷彿させる。
有無を言わさず半ば強引に中に入ると、部屋が焦げ臭い匂いで充満していた。
訝しく思いキッチンを覗くと、歪な形をした物体Xが幾つかテーブルに並んでいる。
オーブンからは現在進行形で煙がもくもくと上がっていた。
一体何の実験をしていたんだ…?
「あー!!また失敗した!もうっ、景ちゃんが途中で邪魔するから…!」
「……何の実験だ?これは」
「実験ちゃう!ケーキ作っとったの!」
「ケ、ケーキ…」
俺の知っているケーキと随分違うが、気のせいだろうか…
「せっかく景ちゃん喜ばせたろ思たんに…」
「俺?」
「誕生日やろ?せやから、手作りケーキでサプライズバースデーしよう思ったんや…」
「………」
「昨日の夜から作っとったけど、ちっとも上手くいかないし、呼び出す前に景ちゃん来ちゃうし、」
最悪や…、と呟いて俯いた忍足の目には、今にも零れそうなくらい涙が浮かんでいた。
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