□恋が愛に変わるとき
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「滝、ここどうやるん?」

「あぁ、ここはちょっと複雑なんだよね…」


次の日。
昨日行き詰ってしまった箇所を滝に教えて貰う。

初心者でも簡単に作れるものはマフラーか膝掛けと言われたので、不器用な俺は膝掛けをチョイスした。
マフラーだとあからさま過ぎて、貰う側が抵抗を感じるんじゃないかと思ったから。
イヤ、大して仲の良くない、しかも男の手作りってだけで抵抗するだろうけど。


「クリスマスまであと十日だね」

「……せやね」

「誘った?」

「………」


押し黙ってしまった俺に、滝は呆れたように溜め息を吐いた。


「もう時間がなくなっちゃうよ?」

「そんなん言われても…」

「早くしないと他の子に先越されちゃうよ?跡部がモテることなんて身に染みて分かってるでしょ?」

「……わかっとるよ…」


それは、痛感している。
眉目秀麗、頭脳明晰、スポーツ万能…
抜群のカリスマ性を持ち合わせているのに、それをひけらかすことはない。
面倒見が良くて誰にでも優しい跡部は、女子は勿論男子からも圧倒的な支持を得ていた。

そんな彼がモテないわけがない。
女の子と付き合う度に、遠目ながらそれを確認しては落ち込んでいた。

正直、焦りを感じている。
滝に無理やり丸めこまれて始まったけれど、俺だって跡部とクリスマスを過ごしたい。
けれど気持ちばかり先走って、なかなか行動に移せないでいた。


「けど、どうしてえぇんかわからへん…」

「そんな深く考えなくてもいいんじゃない?メールで軽いノリ誘ってみるとか」

「……俺からメールしたことあらへんもん」


部活仲間だから、一応アドレスは知っている。
けれど自分からはメールを送ったことはなく、跡部から受けるのみ。
それも部活の事務的な内容で、数える程度の回数しかない。

何度もメールを送ってみようと試みた。
でもなんて送っていいかわからず、そのうち怖気づいてしまい、結局その試みが実行されたことは一度もなかった。


「もう!ウダウダしてる場合じゃないでしょうが」

「……おん」

「……それに…」

「何…?」


急に深刻な面持ちになった滝に、こちらまで緊張してしまう。
滝は少し口籠りながら口を開いた。


「跡部、ロンドンに行っちゃうらしいよ…?」

「……え…」


ガツンと鈍器で頭を殴られたような気がした。
頭の中が真っ白で滝の言葉がなかなか処理出来ない。

ロンドンって?
跡部が?
いつ?

もう会えないの…?


「監督と話してるのをたまたま聞いたんだけどね、冬休みに入ったらロンドンに行っちゃうって…、ジローも知らないからまだ誰にも言ってないみたいだけど…」

「そ、な…」


じゃあもう跡部と会えるにも投十日くらいしかないってこと?
もう二度と会えなくなってしまうの?

喉がカラカラに渇いて上手く言葉が発せられない。
目の前が真っ暗になってしまった。



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