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□恋が愛に変わるとき
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「何で?」
「何でって…、話しかけるんも怖くて出来ひんのに、誘うとかそんなん無理に決まっとるやろ……断られるのがオチやし」
「忍足、いい加減一歩踏み出そうよ?知り合って何年目?はっきり言って、一歩踏み出すとか、そんな次元の話じゃない年月でしょうが」
「うっ…」
ズバズバと厳しい言葉を投げる滝に、言い返すことが出来ない。
確かに、もう出会って六年目。
未だにまともな会話をしたことがないなんて、俺が言うのもなんだけどどうかしていると思う。
けれど怖いんだ。
嫌われるのが、何より。
「そうだ、クリスマス一緒に過ごすついでにプレゼントでも渡したら?」
「えぇ!?」
「どうせなら手作りのものにしてさ」
「ちょ、ちょお待って。クリスマス誘うん、決定事項なん…?」
「もちろん。それくらいやれよ馬鹿が」
笑顔で毒を吐く滝が恐ろしいことこの上ない。
誘うのだって出来るか分からないのに、プレゼントを渡すなんてそんな…
誕生日プレゼントは毎年渡している。
というのも、毎年ジロー主催で跡部の誕生日会が開かれるからだ。
関係ないけど、ジローは跡部のこと大好き過ぎると思う。
跡部も満更でもない様子だから、二人は本当に仲が良い。
幼馴染ってのもあるんだろうけれど、あの二人は部内でも断トツの仲だ。
嫉妬してしまう気持ちもあるが、羨ましい気持ちの方が大きい。
そんな誕生日会では皆プレゼントを渡すから、俺も躊躇いなく渡せる。
……躊躇いなくなんて嘘で、本当はガチガチに緊張しているけれど。
でも跡部に何かをあげるのはそれだけ。
流石にバレンタインはそういうわけにいかず、一応下手くそなチョコを作るも、結局渡すことが出来ずに毎年俺の胃袋の中に消えていく運命だ。
クリスマスだって、同じ。
無理だ、無理に決まっている。
そんな俺の気持ちなんて露知らず、次の日になると滝は笑顔で編み物セットと編み物の本を無理矢理押し付けてきたのだった。
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