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□感謝します!
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そうか。
最初から俺を祝おうと思ったのか。
だから色々訊いて来たりしたんだな。
そこまで思ってはたと気付く。
じゃあ、忍足が予定を空けておくように言っていたのも…
視線を巡らせて忍足を探る。
輪から少し離れたところに、忍足はいた。
小さく笑みを浮かべながら、口を開く。
声は聞こえなかったが、唇の動きでおめでとうと言っているのがわかった。
何故だ?
その笑顔が寂しそうに見えるのは…
何だか物凄く申し訳ない気持ちに駆られた。
「あーとべ!」
「うお!?っ、ジロー!危ねぇからいきなり飛びつくなっていつも言ってるだろ」
「誕生日おめでとー!」
後から不意打ちで飛びついてきたジローを何とか支えて注意するが、当の本人はニコニコ笑ったままで聞いちゃいない。
「お前が企画してくれたんだろ?サンキュ」
「だって跡部のことチョー祝いたかったし!」
「そうか、ありがとな」
「へへ、早く飯食おう?すっげー美味そうだから!」
「……お前、それが目的だろ」
ジローを背負いながらテーブルの前に移動すると、そこには豪華な料理の数々が並んでいた。
こんなこと出来るのは一人しかいない。
「流石だな、萩之介」
「ふふ、ありがとう。でも宍戸と長太郎が手伝ってくれたお陰だよ」
「鳳は分かるが、宍戸が料理ねぇ…」
「な!すっげぇ頑張ったんだそ!」
「ハイ!俺も宍戸さんも跡部さんのこと祝いたかったから、頑張りました!」
「……お前ら…」
「俺らもだぞ!だからセッティングちょー頑張った!な、ひよ?」
「……そうですね」
「………」
温かい言葉に、不覚にも胸にジンときてしまった。
言葉に詰まっていると、萩之介が柔らかい笑みを讃えたまま、カラカウように顔を覗き込んでくる。
「感動しちゃった?」
「ウルセー、バーカ」
照れを誤魔化すために咳払いを一つし、そう言い返すのが精一杯だった。
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