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□不器用な愛情表現
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校内で一番走るのが速い俺に、女たちが付いて来れる訳がない。
途中待ち伏せしていた女たちに、チョコをねじ込まれたり何故か服を脱がされそうになったが、難とか部室に辿り着く。
鬼のような形相で追いかけて来る軍団に恐怖を覚えながら、中に入った。
「ぜぇぜぇ…、つ、疲れた…」
「……跡部、足速すぎ…」
二人して荒い呼吸をしながら、床に座り込む。
外ではキャーキャー五月蝿く喚く声が響いている。
今日は部活中止だな、こりゃ。
「お二人共、お疲れさまです」
「サンキュ…、鳳、これプレゼント。誕生日おめでとう」
「え、俺にですか?わざわざありがとうございます!」
笑顔でタオルとドリンクを差し出した鳳に、バックからプレゼントを取り出し渡してやった。
後輩の眩しいくらいの笑顔は、疲労困憊な俺にとって癒し以外の何物でもない。
普段はちょっと鬱陶しいけど。
「あーとべ!」
「ジロー今日は珍しく早ぇじゃねぇか」
「だってこれが目的だし?」
「……お前なぁ」
後ろから抱きついて来たジローは、いつの間にか俺の懐にねじ込まれていたチョコを取り出していた。
「だっていらねぇだろ、オメー」
「あぁ」
「へへ!もーらい!」
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