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□不器用な愛情表現
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バレンタイン当日。
土曜日も漏れなく部活がある為、俺は昨日せっせと作ったガトーショコラと今日めでたく誕生日を迎えた鳳へのプレゼントを持参して部室に向かった。
「…………」
何だこの状況。
今日は土曜日だし部活がある連中以外は来ないだろうと思っていたが、とんだ誤算だったらしい。
校門前に群がる女どもを見て目眩がした。
しかも確実に、俺の名前連呼してるよな?
毎年この日と自分の誕生日に被害に遭う地獄絵図を想像し、背中に悪寒が走った。
こういう時は、逃げるのが一番だ!
俺の本能がそう告げている!
方向を変え来た道を戻ろうとした瞬間、誰かに腕を引っ張られた。
「うお…!?」
「早く!裏口にいる人あんまりいないから今の内に!」
腕を掴んでいる相手は萩之介だった。
一瞬焦ったじゃねぇか…!
「あ!跡部様が裏口に行くわよ!」
「キャー!!跡部様待ってー!」
こんな時だけ妙に目敏い女たちに軽く舌打ちをし、俺の腕を掴んだ手を離して今度は逆に俺が萩之介の腕を掴んだ。
「跡部…?」
「急ぐぞ、萩之介」
「え?わ…!」
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